『ラフ ROUGH』45点(100点満点中)

長澤まさみのスタイルの良さは異常

昨年の夏は『タッチ』で、今年は『ラフ』。どちらもあだち充原作の人気漫画の映画化だが、一般的に原作の評価は『ラフ』の方が高いとされる。そんな、大きな期待を引き受ける監督は、『NANA』映画版で、コミックの映像化に優れた手腕を見せつけた大谷健太郎。主演は『タッチ』同様、東宝が誇る映画女優、長澤まさみ19歳。

二ノ宮亜美(長澤まさみ)と大和圭介(速水もこみち)は、それぞれライバル同士だった和菓子屋の家に生まれ、やがて同じ高校に進学した。最初はいがみ合っていた二人だが、やがて打ち解け、惹かれあう。しかし亜美には、仲西弘樹(阿部力)というお兄ちゃん的な幼馴染がいた。それを知った瞬間、競泳選手である圭介にとって、同種目の日本チャンピオンである仲西は、同時に恋のライバルとなったのだった。

物語は、この3人の関係に焦点を絞ったものになっている。大和圭介には、ひそかに思いを寄せる女子高飛び込み日本チャンピオンの同級生(市川由衣)という設定もあるのだが、こちらはほとんど触られもしない。

映画としてみれば、あまり面白くないギャグと、あまりうまくない演技による二流の青春劇。『NANA』で、漫画→映画への、恐るべき忠実な変換作業を見せた大谷監督の執念は、むしろ役者を輝かせるという一点に集中しているように感じる。

とくに、見せ場となる競泳、または高飛び込みのシーンなど、邦画としてはなかなかの美しさ。水中やクレーン撮影を多用し、スピードとスケール感ある映像を実現した。速水もこみちも阿部力も、急ごしらえとは思えぬほどすばらしい自由形フォームを見せ、運動神経のよさを想像させる。

しかし、何よりこの映画で輝いているのは、主演女優である長澤まさみであろう。もはや『ラフ ROUGH』は、長澤のアイドル映画といっても過言ではない。

長年隠れ巨乳と言われつづけてきた彼女の水着姿、その全貌が明らかになるのは大きく分けて3つの場面。体の線出まくりのレモンイエロー、そして紺のハイレグ競泳水着と、かわいらしいスカパンビキニの3種類を披露するサービス振り。

その詳細は、ぜひ見てほしいとしか言いようがないが、とにかく長澤のプロポーションの良さはすごい。水着の場面では、同じく水着姿の市川由衣と絡むことが多いのだが、グラビアアイドルの中でもナイスバディの部類に入る市川が、長澤の横に立ったとたん、あれほど貧相に見えてしまうのだから異常である。

東宝のご意向で、豊かなムネを必死にお隠しになっているのが良くわかるが、まったく隠し切れていない。身長も高くて足も長い。女王のオーラが出まくりである。これほど図抜けたルックスの良さと、あの可愛い声、そしてメリハリのある表情は、それだけで突っ走れるほど強烈な魅力だが、いつかそれに演技力がついてきたらと思うと、末恐ろしい逸材だ。

『ラフ ROUGH』は、作品の出来のマイナス点を、主演女優が補って余りある映画だ。終わってみれば、長澤まさみの持つ、映画女優としてのポテンシャルの高さだけがひしひしと伝わってくる、そんな一本であった。



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