『親指さがし』45点(100点満点中)
雰囲気は悪くないが、構成が雑で薄っぺらい
デビュー作『リアル鬼ごっこ』のヒットで知られる山田悠介は、10代に人気のある小説家だ。本作は、彼の同名小説の映画化となる。
久しぶりの同窓会で友人たちと再会した武(三宅健)は、12歳のとき行方不明となった女友達の由美子を探すため、当時の仲間たちに相談する。彼は、由美子がいなくなった原因となった遊び"親指さがし"を、再びやってくれというのだ。たわいもないオカルト遊びだったはずの親指さがしは、由美子を失った彼らにとってトラウマの原因だったが、武の強い懇願により、みな渋々つきあうのだった。
映画『親指さがし』は、アイドルが主演しているからといって、よくある怨霊系お気軽ティーンホラーとはちょっと違う。V6の三宅健は意外にも演技がしっかりしているし、全編とってもシリアスなムードだ。ベーシックな展開と意外なオチを持つ、正統派のミステリードラマでもある。
実在のホテルを利用したセットなど、なかなか不気味な雰囲気をかもしだしていて、とてもよい。特筆すべきはヒロインの一人を演じる伊藤歩で、彼女の持つ清楚なルックスは、この映画にクラシカルな格調高さというものを与えている。
ただし、肝心のお話はいたって平板。伏線をしっかり張っていないから、オチにもさほど驚かず、また感心もしない。
この映画の持つまじめなムードを私は嫌いではないが、そんなわけでどうしても高い評価はあげられない。なお、山田悠介はその文章力のなさをよく批判される作家であるが、個人的にはその点はどうでもいいと思っている。私が好きな作家の綾辻行人だって、デビュー当時はよくそう言われていたが、すでに非凡さは十分に発揮していたし、今では日本有数の実力派となった。
むしろ、私がいくつか読んだ限りでは、山田悠介の小説にはあらゆる点で煮詰めが足りていない気がする。平たく言えば、ありがちなオチ、ネタを、そう見せないための工夫について、作家としての引き出しが少なすぎる。
映画『親指さがし』も、結局のところそんな彼の特徴というか欠点を、カバーしきれていないという印象だ。ただし、山田悠介の読者は10代の学生さんが多いと聞くから、そのくらいの子供たちが見る分には、それほどアラは目立たないかもしれない。