『マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝』75点(100点満点中)
日本が誇るアクションスター2人の初対決
千葉真一と倉田保昭。彼らは、国内はもとより、それぞれ欧米やアジアで高い評価を得ている日本人アクションスターだ。たとえば千葉真一は、出演した「キル・ビル」でタランティーノ監督から最大級の敬意を捧げられているし、和製ドラゴンこと倉田保昭は、かのブルース・リーに、のちに彼の代名詞的存在となるヌンチャクを紹介した人物としても有名だ。
そんな二人が共演し、なんとスクリーン上で対決する。これは、史上初めてのことである(共演自体は過去にもある)。『マスター・オブ・サンダー』は、そのことの価値がわかるアクション映画ファンこそが最大のお客さん、という作品である。
倉田保昭が演じるのは、1400年間怨霊(松村雄基)を封じ込めてきた五重塔を守る和尚。永き戦いの末、仲間たちは倒れ、今では彼が最後の砦となっている。そんな和尚を見て、弟子の女子高生アユミ(木下あゆ美)は、かつての仲間たちの末裔ら6人を集め、再び寺に戻ってきた。
さて、中盤はこの6人と倉田和尚の特訓場面となるが、このあたりはギャグ満載。なにしろこの6人ときたら、秋葉系オタクやコスプレ少女、ヤンキー娘やナンパ男と、まったくもってろくでもない。大体、倉田和尚の弟子がなぜか可愛い女子高生という時点で終わっている。どこをどうみても、数千年間の怒りを溜め込んだ怨霊に勝てるメンバーではない。
彼らと倉田和尚のやりとりが、これまた面白いもので、まるで孫とおじいちゃんのほのぼのとしたそれのよう。倉田保昭や千葉真一は、世代をひとつ飛び越えたティーンエイジャーの少女たちと共演すると、お互いの持ち味がより輝く。
谷垣健治監督は、このあたりの面白さをよく理解しているようで、笑いに関するセンスは抜群。たとえば香港のB級アクション作品にあるような、予算の少なさを逆に魅力にするやり方も、よく心得ている。
また、彼はもともとアクションの専門家なので、肝心の格闘場面の演出も安心だ。とくに、冒頭の6分間ワンカットのアクションシークエンスは、近年まれに見る、芸術的なまでに美しいできばえで、振り付けの巧みさ、演じる役者の力強い肉体美、やられ役たちの上手さがすべて高度に融合され、無条件で拍手したくなるほどだ。
ストーリーはかなりテキトーに見えるが、決してそれがマイナスにはなっていない。クライマックスには引っ張りまくった金看板二人の対決が配置され、観客の興奮も最高潮に達する。むろん、二人のアクションには文句の付け所がない。世界中のアクション映画ファンに、ほれ、といって見せてやりたいくらいだ。
『マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝』は、二人のアクションスターと、元気いっぱい、魅力的な若い役者たち、そして抜群のユーモアセンスとアクションを味わえる、とてもお得なエンタテイメントだ。比較的低予算と思われるが、これ以上のカネをかける必要はないと思わせる、堂々たる完成度。思いっきり笑って、高度なアクション、格闘技術を堪能できる一本である。