『東京フレンズ』30点(100点満点中)
DVD版と大塚愛のファン限定
avexとフジテレビが人気歌手大塚愛を主演に作った、女の子たちの青春ドラマ。もともとDVD用に作られた作品の続きを映画化したものだ。DVD版は、あの大塚愛が役者をするという意外性と、彼女のファン層に訴えかける音楽性により、なかなかの好評を博した。
自分を変えたくて、高知の田舎から上京した玲(大塚愛)。彼女がバイト先の居酒屋で出会った仲間たちと組んでいるバンド"サバイバルカンパニー"(通称サバカン)に、メジャーデビューの話が来た。しかし玲は、バンドの方針で衝突してニューヨークへ去ったギタリストの隆司(瑛太)の事が気になっていた。隆司は玲を「おまえの声が好きだから」と、ボーカルとしてバンドに引き入れた人物だった。
正直なところ、これはDVD版を見ていないものにはきつい。地方からやってきて、夢をひたすら追いかける少女の純粋さ、ひたむきさを描く青春映画だが、映画版の中ではその夢への努力の過程、または挫折についての言及が無いので、あまりに軽薄に見えてしまう。
私は個人的には、ただ夢を追い続けましょうなどと(不特定多数の)若者に訴えるのは、無責任極まりない事だと思っている(突出ある才能あるものに対しては別)。そんな事を言っていたら、日本は中高年フリーターだらけになってしまう。夢を追う前にまずは地に足をつけろと、現実を伝えるのが大人の役目というものだ。高知を何も無い田舎などと切り捨てる前に、やるべきことがあるではないかと、そう感じてしまうのである。
『東京フレンズ』を見ると、ヒロインの周りには似たような年頃の"トモダチ"と"オトコ"しか出てこない。親、すなわち大人の視点は皆無である。このせいで、まるで高校生くらいの子供たちが、同世代向けに作ったような底の浅い話に見えるのだ。出てくる"挫折"が、オトコとのトラブルだけってのも、いかにも現代っ子向けらしいのんきさだ。
大塚愛は、ルックスも演技力も残りの3人からは少々見劣りがし、DVDならともかく大スクリーンで2時間主演を張るのはつらそうだ。ただし、さすがに歌唱シーンでは別人のように落ち着いた姿を見せる。ただ、ライブシーンからエンドロールまで含めて、終盤に3曲連続でフルで流すというのは、やりすぎな気もするが。
『東京フレンズ』は、一応一話完結風になっているものの、映画版だけ見ても物語としては完成していない。よって、大塚愛を見ているだけで幸せという方や、DVD版を見たファン以外にはすすめにくい。
無論、評判のよいDVDの内容を加味すれば、もしくはDVDで鑑賞すればこのような点数になることは無いだろうが、このサイトはあくまで新作映画としての評価なので、これ1本を単独で見た場合、という条件付でこのくらいの評価としておきたい。