『I am 日本人』60点 (100点満点中)
日本人、愛国心、国旗、国歌、そんなテーマを問い掛ける
熱い愛国者、森田健作が、長年温めつづけた企画を映画化。今の堕落した日本を嘆き、現代人に日本の本当の良さを再認識してもらうという、強いメッセージをこめた作品だ。
主人公の日系3世エミー(森本クリスティーナ)は、祖父の影響で大の日本びいき。高校卒業と同時に、彼女はついに憧れの日本に留学にやってきた。昔ながらの人情が残る下町の商店街で、八百屋を営む親戚(森田健作)の元に居候し、日本を見て回った彼女は、祖父から聞いた「礼儀と美の国」と現代日本、および日本人が、大きく異なっているのにショックを受ける。
冒頭20分間は、あまりに直接的でひねりのない、NHK教育テレビのような恥ずかしいドラマ演出にイタタな気分になるが、これに無理やり自分を慣らすことができれば、エミーが日本のヘンなとこに違和感を持っていくあたりから、なかなか面白くなってくる。
明るくて素直な米国人ギャルの視点で、現代日本の乱れを指摘する。過半数が笑顔の表情で、この上なくほがらかに演じる森本クリスティーナのキャラクターのおかげで、この指摘はまったく嫌味に感じない。彼女があまりにいい子なので、うんうん、そうだよなあと、大いに共感できる。気軽なコメディ風味になっていて、堅苦しさもまったくない。
日の丸、君が代について、その大切さを何度も強調し、観客に問題提起するあたりも、森田健作らしく、あまりにもストレート。中国や韓国にさんざん政治テーマとして利用されてしまった日本の国旗国歌だけど、私たちは日本人なんだから、もっと素朴に受け入れようよ、というわけだ。劇中に出てくる中国人留学生が、激しく日本批判を行い、それにエミーが反論するシーンでは、あまりにありがちな中国人の論理展開に、思わず笑ってしまった。
全体的に、素朴で純粋な保守オヤジによる映画だなという印象を受けるが、一方的な主張だけではなく、ひとり商店街から孤立する雑貨屋店主(布施博)による、一理ある反対意見を提示するあたりには感心した。そして、到底相容れないと思われたこの2者を、どのような方法で和解させていくかにも、なるほどと思わせるものがあった。
『I am 日本人』は、映画としてはお話にならないくらい素朴というか、いまどきの映画としてはセンスのかけらもないバカ正直、かつ真面目すぎるものだ。しかしながら、日本と日本人というもの、愛国心というものに対し、いくつかの示唆を与えてくれる珍しいタイプの作品でもある。おそらく、千葉の市川あたりを舞台にしたのではないかと思われるが、あのあたりは私の出身地、下町の代名詞である葛飾亀有よりも、ある意味下町情緒の残るところで、その古きよき風景にも心癒される。どうにも憎めない一本なのである。