『ザ・フォッグ』20点(100点満点中)
気の長い幽霊たちの復讐劇
先日、日本でも公開された『アサルト13 要塞警察』に引き続き、ジョン・カーペンター監督の代表作のリメイクが公開されることになった。ジョン・カーペンターといえば、チープな見た目ながら妙に面白い作風がB級ファンに根強く支持されている、SFホラージャンルの人気監督。このリメイク版も、監督こそ別の人に任せたが、自ら製作に参加している。
舞台はアメリカ、オレゴン州の港町。1871年、この町の男4人が、沖合いの船を襲い、略奪と虐殺の限りを尽くした。あれから100年、大きく発展したこの町は、創立記念日を祝う真っ最中。町の創生期に貢献した4人の銅像も建造された。ところがその夜、町には深い霧が立ち込め、沈んだ船の怨霊たちによる、4人の子孫への復讐がはじまった。
同じカーペンターのホラーでも、わかりやすい殺人鬼が登場する『ハロウィン』とは違い、『ザ・フォッグ』は霧によって不気味さを盛り上げていく、ムード重視の作品。よってこのリメイク版も、霧の演出に非常に力を入れている。CGなども試した結果、結局昔ながらの人口霧で行くことに決めたというエピソードが興味深い。
とはいえ、リメイク版『ザ・フォッグ』は、霧は確かにきれいだが、そこから肝心の怖さというものがほとんど感じられず、非常に退屈。ショックシーンもスプラッタシーンもほとんどないホラー映画だから、通常より演出の工夫が問われるところなのだが。
この映画の監督には、もっと知恵を絞り、人をどう怖がらせるかという点を追求してほしい。ちょっとした意外オチがあるとはいえ、それだけでは魅力は薄い。
なお、オリジナルの脚本家であり、製作も担当したデブラ・ヒルは製作中に54歳の若さで亡くなり、本作は彼女にささげられている。