『ウルトラヴァイオレット』55点(100点満点中)
ミラ・ジョヴォヴィッチをたっぷり楽しもう
2002年のアメリカ映画に『リベリオン』というのがあるのだが、これがなかなかよくできたSF映画であった。監督の長年の夢を入れ込んだだけあって、そこらのお手軽エセSFとは一味ちがう本物風味で、当時は私も絶賛したものだ。
そしてその監督カート・ウィマーが今回、人気女優ミラ・ジョヴォヴィッチ(『バイオ・ハザード』シリーズ主演など)をヒロインに想定して書き上げた、オリジナルSFストーリーが、『ウルトラヴァイオレット』。オールデジタルビデオ撮影、VFX満載のアクションものだ。
この未来世界の設定は、人類の一部があるウィルスに感染し、ファージと呼ばれる超能力を得た新人類になってしまい、旧人類から危険視され、迫害されているというもの。ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるヒロインは、ファージ最強の殺し屋で、人類側の最終兵器の強奪という、重要な任務につく。
ところがなんと、その最終兵器とはまだあどけない人間の少年(キャメロン・ブライト)。かつて人類側に、無理やり中絶させられた過去を持つ彼女は、どうしても少年を処分することができず、彼を連れて人類、ファージ双方から追われる羽目になる。
『ウルトラヴァイオレット』はミラのために書かれた脚本ということで、隅から隅までミラ様礼賛映画になっている。ほとんど出ずっぱりで、次々と華麗なアクションをこなす彼女、モデル出身だけあって立ち姿が美しく、体にぴったりとフィットしたコスチュームも、バッチリ似合っている。なんと言っても、やたらと多用される顔とお尻両方のクローズアップに、これだけ見事に耐える女優は少なかろう。
アクションの動き自体は、長身だけあって少々のろいが、黒いストレートロングヘアがなびく姿は大変美しい。『リベリオン』のファンにとっては、彼女があの抜群のプロポーションで、ガン=カタ(GUN-KATA)を演じているのが嬉しいところだ。
ちなみにガンカタとは、この映画の監督がリベリオンのときに開発、披露した、オリジナル性の高い、ガンアクションの殺陣のこと。これこそが、『リベリオン』の高評価の最大のポイントとされる。これとあわせ、武器をデータとして圧縮して持ち歩くシステムや(別名:四次元ポケット)、サブマシンガンの銃身を連射で熱して、傷の消毒を行うなどといった小ネタが、相変わらずマニア層に受けそうだ。
本作で表現される未来世界は、ミラの髪や服の色が一瞬で原色系に変化する仕掛けや、銃の発射炎が紫色だったりなど、ヴィジュアル的に美しいもの。なかでも冒頭のアクションシーンは最大の見所で、ここで披露される重力を変化させるアイテムは、なかなか斬新な映像を作り出している。
このアイテムは、重力の方向を自在に変化させられる代物で、ちょいとひねると乗っているバイクがビルの壁面を普通に走れるようになったりなる。通常の重力の影響を受けて飛んでいる追っ手のヘリと、スクリーン上で90度の傾きの差を保ちながらのチェイスシーンはとても面白い。
ただ、本作は予算規模がさほど大きくないので、オールCGで作られたこれらのシーンは、かなりアニメ調で不自然なものだ。それは覚悟の上で観にいってほしい。
それにしても、『キャットウーマン』のハル・ベリーにしろ、『イーオン・フラックス』のシャーリーズ・セロンにしろ、ルックス自慢のあちらの女優さんは"強い女ヒーロー"を演じるのがお好みのようだ。3人とも、そろってセクシーな未来的衣装を身に付けて、自慢のプロポーションを見せ付けているあたりが微笑ましい。自分に自信をもっている女性とは、実にかわいいものである。
個人的に笑ったのが、人類側の重要拠点のセキュリティシステム。何重にも本人確認、武器チェックを行うのだが、なぜかその最後のチェックで、服を脱いで全身スキャンなどというのがある。とんでもない高度文明のくせして、たかが全身チェックにいちいち男性係官の前で、服を脱ぐ必要があるのか。まさに、脱ぎたがりのミラ・ジョヴォヴィッチのために作られたようなシーンである。監督は、彼女とファンの心理をよく理解している。
そんなわけで『ウルトラヴァイオレット』、週末のお気楽娯楽にはちょうどいい一本だ。ストーリーはテキトーだし、『リベリオン』のようにパンチある意欲作ではないものの、日本人好みのウクライナ美人をたっぷりと満喫できる、男にとっては癒しの一本といえる。