『ステイ』75点(100点満点中)

最後の最後に明らかになる、あまりにリアルな感動

『ステイ』はネタバレ厳禁、とんでもない結末を持つ映画だが、その結末は他のミステリ映画のように、観客を驚かせるためのものではない。

主人公は、精神科の医師(ユアン・マクレガー)。今日からちょいとやっかいな患者(ライアン・ゴズリング)の担当になった。その患者は悲しげな瞳をした青年で、もうすぐ自殺すると、その日時まで指定して去っていった。最初は戸惑う主人公だったが、前任者の医師が急に引きこもってしまったり、この患者が雹が降ることを正確に予知するなど、不思議な出来事を目の当たりにするにあたり、狂言自殺の類ではないと確信する。彼の命を救うべく、必死にその行方を探す主人公だが……。

この映画をみると、意味不明なシーンの挿入や、カットのつなぎ方のヘンさ、こちらを落ち着かなくさせる映像へのエフェクトなど、とにかく見た目のわかりにくさに、頭の中に???が並ぶだろう。ただし、それらにはすべて意味がある。時には伏線として、時には結末を暗示する大胆なヒントとして、そうした仕掛けは観客に提示される。私はこの映画をすでに2度観たが、背景の音や群集のセリフにいたるまで、非常に手の込んだ仕掛けが施してあることが見て取れた。

ただし、初回観るときは、そうした仕掛けはすべて「意味不明」な何かにすぎず、その意味するところを推測することは困難……というより、ほぼ不可能である。それらは観客にとって、ただただ猛烈な睡魔を誘うだけのものに違いない。そう、『ステイ』は非常に退屈な映画なのである。

この、途中のつまらなさは、結末の見事さを考えるとじつにもったいない。もう少し、観客の興味を集めつづける何かがあれば、もっとよくなったと思うのだが。この映画を見るときは、よけいな事は考えず、観客はただただ翻弄されるだけで良い。すべては最後に明らかになる。

この映画の中には、交通事故シーンがあるが、これがまれにみる激しいもので、見るものへ大きなショックを与える。この場面に限らず、視覚効果を多用した作品であり、その出来がまたじつに優れている。監督の演出意図とその再現である映像のシンクロ率が高く、ロケを行った場所も印象に残るところばかりで、相当センスの良い映像作りのスタッフがいることが窺い知れる。

さて、肝心のオチについてだが、それがすべてのような映画だから、あまり詳しく語ることは出来ない。ただ、途中のくそつまらない(失礼!)もやもやの意味が一気にわかるとき、そこにはあまりに切ない、そして感動的な真実が待っている。謎が解けたとき、ああ、『ステイ』はなんてリアルな映画だったんだろうと、誰もが驚くに違いない。

それにしても、この場面での、ナオミ・ワッツの表情のすばらしいこと。あの患者のおかげで、彼女たちにいったいその後、何が起きたのかを考えると、心の奥底まで届くかのような深く暖かい感動に襲われる。

その後のエンドクレジットの背景画像にも、ちゃんと意味がある。その意味、配置順などをかみしめながら見ていると、また涙が出てくる。これは、絶対にエンドロールの途中で立ってはいけない映画のひとつだ。

場合によっては、観終わってもわけがわからず、一種の混乱状態のままであるかもしれない。デートで気楽に観るような映画でもない。しかし、心に長く残るタイプの、間違いなく佳作といえる一本である。

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