『夢駆ける馬ドリーマー』40点(100点満点中)

世界一の子役による、ダコタ・マジックも不発か

競馬の祭典、日本ダービーが開催されるから、というわけでもなかろうが(実際関係ないらしい by 宣伝部のオンナノコ)、今週来週と、立て続けに馬関係の映画が公開される。『夢駆ける馬ドリーマー』はその1本で、実話を元に作られた、ストレートな感動ドラマだ。

舞台はケンタッキー州レキシントン。主人公の調教師(カート・ラッセル)は、あるとき期待の牝馬ソーニャドールの脚に違和感を発見する。出走辞退を進言したが、オーナーの無理強いによりやむなく出走させた結果、ソーニャドールは転倒、骨折してしまう。

骨折したサラブレッドの常で、誰もが安楽死を覚悟したが、偶然観戦にきていた馬好きの娘(ダコタ・ファニング)の手前、彼は自分の報酬と引き換えに、ソーニャドールを引き取ることに決める。

かくして、主人公一家によるソーニャドールのリハビリが開始されるというわけだ。これは、実際に安楽死処分をまぬがれたある牝馬が、レースに復帰したという実話からインスピレーションを受けて作られた、劇映画である。(よって実際のエピソードと映画はかなり異なる)

この調教師は、なぜか実父と仲が悪く、疎遠になっている。だが、娘は祖父とも仲が良く、彼のところへ馬のことをしょっちゅう学びに行っている。しかし、これが父は気に入らない。ビジネスの厳しさを知っている彼は、純粋に馬を愛している幼い娘を、この業界に引き込みたくなかったのだ。

そんな親子の間の人間ドラマと、娘と馬の愛情物語が並行して描かれ、感動のラストへと収束する。非常にハリウッド的な、奇をてらったところが一つもない「お涙頂戴ストーリー」である。こういうものが好きな人にとってはたまらない。

世界一のオトナコドモことダコタ・ファニングは、撮影時、歯の生え変わる時期だったようで、歯並びがガタガタである。これでは天下の美少女も、その美貌が台無しだ。自慢の演技力も、そっちばかりが気になって、いち観客として十分に味わえない。出演者をことごとく食ってしまう、"ダコタマジック"が不発だったのは初めてだ。

レースシーンは、何十億もお金をかけたハリウッド映画の割にはイマイチな印象。ただこれは、どうしても『シービスケット』のパーフェクトな撮影ぶりが私の頭にこびりついていて、比べてしまっている部分がある。これ単体で見る分には、決して悪くはないかもしれない。

馬と人との友情については、これはある意味、馬をペットのようにみなしている人間側からの勝手な言い分、お話であるから、どうしても偽善性が残るのはやむないところ。そうした点が気になる人は、やめたほうが良かろう。

実話を元にしたとはいえ、内容はフィクションなのだから、もう少し華やかさがほしかったのだが、少々地味で退屈。全体的に見て、あまり盛り上がらないな、という印象だ。



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