『テニスの王子様』70点(100点満点中)

キャラクター映画としての正義を持っている

漫画実写化の大本命『デスノート』に先駆けて、同じ週刊少年ジャンプの誇る看板作品、通称『テニプリ』がついに実写映画となった。この作品は、原作はもとよりアニメ、ミュージカルと文句なしの成功を収めている。とくにアニメ版は、海外作品の輸入制限を行っている中国が、今年唯一日本から輸入したほどの作品でもある。はたして実写映画版の出来はいかなるものか?

伝説のテニスプレイヤー越前南次郎(岸谷五朗)の息子リョーマ(本郷奏多)が、テニスの名門・青春学園中等部に転入してきた。ふてぶてしい態度でテニス部をなめてかかるリョーマに、2年生の海堂薫が挑むが、リョーマは互角以上の戦いをし、周囲を騒然とさせる。態度は相変わらずだが、部長の手塚国光(城田優)に実力を認められたリョーマは、テニス部の一員として、青春学園の関東大会優勝を目指していく。

『テニスの王子様』はすでにテレビアニメが放映終了しているため、一般の子供たちにおける人気は鎮火している。しかし、キャラクター設定がしっかりしている作品の常で、コアなファンの熱狂ぶりはとどまるところを知らない。

この実写化においても、そのあたりはよく心得ているようで、ストーリーよりもキャラクターの魅力を引き出すことに重点をおいたつくりとなっている。中でも、人気ランキングで常に上位に位置し、物語においてもキーとなる存在の手塚部長役には、ミュージカル版と同じ城田優を配して万全を期している。この若い役者がまた、じつにハンサムで色っぽい。この役を、しっかりと自分のものにしていることがよくわかる。

テニプリは登場人物が多く、みな個性的で魅力たっぷりであるから、わずかな上映時間でそのすべてを伝えるのはさぞ難しいだろうと思っていたが、意外なことにその点ではよく健闘していた。

リョーマの勝気なかわいらしさや不二の天才性、海堂の情熱など、人気キャラのかっこよさは私にも十分に伝わってきた。オンナノコを引き連れて歩く跡部などは、実写にするとあまりにわかりやすい演出で、思わず笑った。映画版のオリジナルキャラクターである兄妹の存在は、ジャンプ三原則(友情、努力、勝利)をより際立たせる役に立っている。また、越前リョーマ以外、誰一人として中学生(どころか高校生にも)に見えないあたりも楽しい。

さて、次にテニスの試合場面について。この作品の特徴でもある、"ありえない"アクロバティックな大技を、いったいどうやって実写で表現するのか。ほとんどギャグになるのではないかと、事前に危惧されていたシーンの数々である。

何しろこの作品、技のネーミングセンスからして振るっている。「破滅への輪舞曲(ロンド)」とか、「白鯨(はくげい)」「羆(ヒグマ)落とし」など、素人には何のスポーツの技だかさっぱりわからない。そもそもスポーツの技名か?

「いくぞー、破滅へのロンドー!」とか、そんな技の名前をおもむろに叫びながら、各選手はプレイする。まさに、一見さんお断りの世界である。

しかしながら、この雰囲気がファンにはたまらない。ハマる要素の一つなのだ。各技は、少々安っぽいCGを駆使した思い切りのよい演出で彩られ、迫力もなかなかだ。何しろ、コートネットの外側を回り込むカーブボールを、あたりまえのように中学生が打ち合っているのだ。現実世界であれば、この中の誰が出ても、間違いなくグランドスラム達成であろう。

この"ありえなさ"を、つくり手側も自覚して楽しんでいるのがよくわかる。時折、そのあたりをこちらに伝えるかのように、ユーモラスに見せてくれるので、正直なところ、オトナの私でも拒否感を抱くことなく、かなり楽しめた。真っ正直に、無理やりかっこよく見せようとしないあたりがとてもよかった。

オジサンだらけの試写室にもしょっちゅう笑いが起きていたが、それは作品を馬鹿にした笑いではなく、私同様、作品に好感を抱いた感じの笑いであった。

少々予算不足なのか、合成部分と実写部分には大きな違和感が残るし、役者の演技も決して上手いとはいえないが、全体のバランスは悪くない。各キャラについて、駆け足で描いたようなストーリーなので、それぞれのファンには1シーンずつくらいしか見せ場がないが、なんと言ってもよくこの作品を実写にできたものだと感心する。もしパート2が出来るなら、それぞれの人物たちをさらに掘り下げてもいけるだろう。

こういうのも、たまには悪くないと感じさせる、好感度抜群の一本であった。

 
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