『LIMIT OF LOVE 海猿』80点(100点満点中)

荒っぽい点はあるが、見ごたえ十分の海洋パニック大作

今週はゴールデンウィーク真っ最中というわけで、公開作品数が少ない。このサイトで紹介できるのも、これ1本ということになり少々寂しいが、訪問してくれた全員が読んでくれると思えば嬉しくもある。

さて、この作品は、いわずと知れた人気漫画の実写版。同じキャスト、スタッフによって04年に劇場版第1作が公開され、その後テレビで連続ドラマにもなった。『LIMIT OF LOVE 海猿』は、そのシリーズの完結編だ。

ただし、東宝のマーケティングチームは、あえて本作のタイトルに、パート2とか3といった数字をつけなかった。その理由は、本作が、単独で見ても問題なく楽しめる一話完結的なつくりであることがひとつ。そして、続編であることを明記して間口を狭めても十分な収益を見込めるほどのパワーが、まだこのシリーズには無いと、彼らが考えたからであろう。そして、その判断はおそらく正しい。

さて、彼らは海猿完結編たる本作を、相当思い切った大作、ブロックバスターとして仕上げてきた。ストーリーは、鹿児島沖で1万トン級の巨大フェリーが座礁する前代未聞の大事故が発生し、そこに全国の海上保安庁から救助チームが集結するという壮大なもの。

海猿製作チームは、シリーズ通して海上保安庁との信頼関係を築いているから、本作でも巡視船11隻やヘリコプターなどを提供され、まさに全面協力態勢だ。さらに、ある海運会社からは本物の巨大フェリー上でのロケの許可も出た。それらに最新のCG技術を加えた結果、本作は日本映画としては、かつて見たことの無いほどの大迫力の海洋パニック映画となった。フェリーの沈没シーンなどは、300億円をかけたとされる、某巨大客船沈没映画と比べても遜色ない。

ただし、シリーズ期待の潜水アクションは、残念ながらほとんど無い。この映画は、沈み行くフェリーの船底に取り残された主人公の潜水士(伊藤英明)と乗客数名が、海上の救助部隊と協力しつつ、いかに脱出するかというサバイバル劇なのだ。

この映画は、大型連休に見る娯楽ムービーとしては、ほとんどの方にとって恐らく文句なしの一本だが、私のようなうるさがたにとっては、いくつかの不満点もある。たとえばそれは、どの場面でも鳴り止まない劇伴音楽のうるささであったり、感傷的なシーンにおいて、ややしゃべりすぎの登場人物だったりする。

さらに、あらゆる面において、わずかずつ物足りないという印象も受ける。冒頭の航空機墜落シーンは予算不足を露呈しているし、CGはフェリーの外観、爆発場面において少々うそ臭い。

そして、魅力的な登場人物たちも、主人公脇の数名がほとんどお荷物状態で、活躍の場が少ない。どうしても生き延びたい妊婦と、複雑な事情を抱える謎めいた男という、いかにも劇的なドラマを演じてくれそうな乗客たちをそろえたのに、不完全燃焼で終わってしまったのは残念だ。冒頭から、思わせぶりに出てきたサブキャラ(テレビのレポーターなど)たちが、ほとんど本筋に絡むことなく終了、というのも荒っぽい。

ただし、加藤あい演じるヒロインと主人公との、感動的なラブシーン、告白シーンについてはじつによかった。こうしたスケールの大きな作品には、彼らのような美男美女のロマンスがよく似合う。

彼らをはじめ、役者たちが自分の役に慣れているから、邦画の大作にありがちな、肩の力入りすぎ状態=オーバーアクトに陥ることも無い。展開にダラケもないし、演出面でも気恥ずかしくなるようなセンスの悪さも(それほどは)感じない。このくらいのものを作ってくれれば、まったくもって十分である。

『LIMIT OF LOVE 海猿』のような映画が増えてくると、カップルが映画館で迷わず洋画を選ぶような状態が解消され、好調の日本映画界もますます発展する。この手のまっとうな娯楽映画によって映画ファン全体の裾野が広がれば、作家性の高い、マニアックな映画を作る人たちにもチャンスが広がるというものだ。そんなわけで『LIMIT OF LOVE 海猿』を、私は全面的に支持したい。

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