『小さき勇者たち〜GAMERA〜』20点(100点満点中)

子供向けにしても、もっとしっかりしてほしい

日本映画界において、ゴジラに並ぶ特撮シリーズの人気者がガメラだ。その、誕生40周年にあたる今年、まったく新しいコンセプトの新作が登場した。『小さき勇者たち〜GAMERA〜』は、大人の怪獣ファンも唸らせた平成ガメラとはうってかわり、小学校低学年くらいの子たちのためだけの、ファンタジックな感動ものになっている。

最近母親を亡くした11歳の少年は、あるとき奇妙な卵を見つける。やがてそこから亀が生まれ、少年はトトと名づける。父に内緒で育てていくと、あるときトトはふわりと宙を飛び、少年らを驚かせた。

一方、海では巨大生物が人間を襲う事件が勃発、やがてその怪物から町を守るため、トトことガメラが立ち向かうという物語だ。

前半は、のび太の恐竜実写版よろしく、少年とカメさんの交流を暖かく描く。ところが、どうやらこのカメ、30年前に人々を巨大怪獣から守ったガメラの子供じゃないかという噂が広まり、少年はやがてくるトトとの別れの予感を感じていく。

40周年の新しいコンセプト、というわけか、キャラクターデザインはなんだかガメラというよりは、やさしいカメさんといった感じで、妙にマンガチック。子供たちの憧れ、強いヒーローというより、等身大のお友達、ペットに成り下がってしまったあたりは、賛否が分かれそうだ。

女の子も含む新しい客層をつかめれば、という、いかにも今風な発想だと思うが、私としては、子供相手だからといって、人畜無害なものをというのは、ちょいと違うのではないかと思う。

ガメラについては、子亀時代は本物の亀で撮影しているから、成長後(かわいいカメさん)との見た目の違和感が著しい。

巨大に成長したあとの、怪獣とのバトルシーンなどは、最新のCG技術と、昔ながらの着ぐるみ&ミニチュアをほどよく混ぜてある。こうした特撮には、空からの構図など、時折はっとさせるショットがあるものの、この映画の魅力はそこまで。

この作品、脚本(とくに後半)が悪い。「子供が大人を出し抜いて大活躍する」というストーリーは、そんなに難しいものだろうか。いくらなんでも、飛行石(byラピュタ)と集団催眠しか、子供を活躍させる要素を思いつかないというわけでもあるまいに。

『小さき勇者たち〜GAMERA〜』は、そのコンセプトを含め、全体的なつくりが優等生すぎて、作り手の「やりたいこと」、情熱がいまいち見えてこない。せっかく映画なのだから、もう少し大人たちをも感心させるくらいのものを作ってほしいのだが。



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