『ニュー・ワールド』35点(100点満点中)

綺麗な映画ではあるが、考証と人物描写の非リアルが気になる

極端な寡作で知られる映画作家、テレンス・マリックの最新作。……ときいて、胸躍らない人には不向きな作品だということを、最初に書いておこう。

これは、ディズニーによってアニメにもなったポカホンタスの物語の実写映画化。17世紀初頭のアメリカ大陸を舞台に、英国の冒険家ジョン・スミスとネイティブ・アメリカンの娘、ポカホンタスの恋と、アメリカの建国物語を描く。

しかし、見所はそうしたドラマ、ストーリーではなく、比類なき美しさを誇る映像の方。お芝居を、あたかもドキュメントのように撮った作品で、ワンシーン、ワンショットをゆっくりと、何度も何度も違う角度から、じ〜っくりと見せる、そういう映画だ。

印象的なのは、モーツァルトピアノ協奏曲第23番イ長調第2楽章K.488のせつないメロディ。私は、知ってるモーツァルトの曲の中で、じつはこれが一番好きなのだが、驚いたのはこの長い曲(カットしているとはいえ、もともとは7分以上ある)を、最初から最後まで流すという、豪快な使い方をこの監督がしている点。

しかもそれを、1度のみならず、何度もやっているのだ。いくらなんでも使いすぎだし、能がないなとは思うが、これだけでも、いかにこの映画のペースがのんびりしたものか、想像できるというものだ。

ポカホンタスを演じたクオリアンカ・キルヒャーは、かわいらしい女優だが、演技力不足だし、彼女に限らず人物描写の面ではリアリティが不足している。結局最初に書いたとおり、お芝居をみるより、キレイな画面を楽しむ映画というわけだ。



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