『Doom/ドゥーム』60点(100点満点中)
姉萌え&自分視点を取り入れたエポックメーキング的アクション映画
ハリウッドではビデオゲームの映画化が大人気で、本作もその流れのひとつ。元となったゲーム、「Doom」シリーズ(映画版は3を原作としている)は、まだインターネットが普及する前から大人気の、パソコン用SFシューティングゲームだ。
ゲーム画面はプレイヤーの視点そのもので、敵を倒したりアイテムを探したりといった冒険を、臨場感を味わいながら楽しめるようになっている。このタイプのゲームは、今ではゲームセンターでも大人気だが、DOOMはそうした後発の作品にも大きな影響を与えたといわれている。米国ではあまりの人気に、ネットワークがパンク寸前になったり、宗教団体から残酷描写を非難されるなど社会問題にもなったほどだ。
さて、そのDOOMがいったいどんな映画になったかというと、これがまた実に見所たっぷりのバカ映画。まずはストーリーから紹介しよう。
舞台は近未来。あるとき火星にある研究所から、緊急救援要請が入る。カリフォルニア海兵隊、特殊作戦本部の緊急対応戦略部隊は、リーダー(ザ・ロック)のもと8名の精鋭を組織し、火星へと向かう。彼らが到着すると、そこには謎の化け物により、壊滅寸前の研究所の姿があった。
元プロレスラーで、いまやアメリカ映画界を代表するマッチョスターのザ・ロック主演の、SFアクション映画だ。のっけから彼のバックヌードを写すサービスぶりで、その適度な筋量の広背筋に、まずはウットリとさせられる(註・筋肉好きの人のみ)。
その後は、ノー天気なB級SFとして、物語はどんどん突っ走る。ゲーム版では綿密な流れによって、それなりに説得力を生んでいることと思うが、映画版は強引そのもの。人間がどんどんパワーアップするよくわからない設定などに疑問を差し挟み、いちいち立ち止まっていてはこの映画は楽しめない。観客も、ノリよく突っ走ることがポイントだ。
銃器の選択など、「映像的に派手な方がいいだろう」という製作者の短絡的思考がハッキリわかってとても笑える。なにしろ軍隊というものは、普通は弾薬の共通化のため、皆が同じ銃を持つのが基本なのに、この映画の海兵隊ときたら、めいめいが勝手に自分の好みの銃をもっているのだ。何しろ狭い通路で戦うのがわかっているのに、わざわざ重厚なチェーンガンを持っていくのだから、苦笑を禁じえない。そして、案の定、派手な死にっぷりを見せるハメになる。そんなサービス満点の君たちは素敵だ。
中でも、ザ・ロック隊長が研究所で最新鋭の重火器、BFGを発見するシーンがいい。もう、表情がすでに銃マニアのそれで、救出作戦よりも「この銃つかいてぇなぁ〜」という心情がバレバレ、ほとんど変態の粋に達している。そんな事より真面目に仕事しろ、とツッコミたくなる事うけあいだ。
じつはこのあたりは後半の伏線になっているのだが、ともあれこの映画の銃撃戦の迫力はハンパではない。冗談みたいな威力の銃が次々登場し、見た目で楽しませてくれる。
またこの映画、こんなアホな内容なのに、じつは二つも斬新なチャレンジを行っている。
一つは、ヒロインについてだ。この映画のヒロインは主人公の姉で、研究所で働く学者である。このお姉さんが傑作で、巨乳でやたらと谷間をみせまくり、乳首まで浮き上がって見せている。そんな学者がどこにいるんだよと、誰もが心で思うだろう。しかも、大して必要もないのになぜか救出隊員の双子の姉、という妙な設定にしているのも笑える。ハリウッドが、ついに"双子の姉萌え"の世界に踏み込んだという事で、『ドゥーム』は映画史に名を残すであろう。
もう一つは、実写映画で一人シューティングの画面を忠実に再現したクライマックスのアクションシーンについてだ。このシークエンスは本当に素晴らしかった。敵の死に方もバラエティに富んでおり、臨場感も抜群。これほど長い時間、自分視点のアクションシーンを見せた映画はかつてなかった。
これら2つの新しいアイデアに加え、ザ・ロックの肉体アクションも楽しめる。『Doom/ドゥーム』は本当に愛すべきアクションムービーだ。たわいもない映画ではあるが、埋もれさせるにはもったいない。興味のある方はぜひご覧になってほしい。