『機動戦士ZガンダムIII 星の鼓動は愛』80点(100点満点中)

映画として成立しており、3部作では最高の出来

2005年5月と10月に公開された前2作は、かなりの好成績を残し、Zガンダム人気の根強さを印象付けた。テレビ版とは違うと噂される結末と、大幅に増やされた新カットが期待される、新約=劇場版の最終章がこの『機動戦士Zガンダム V −星の鼓動は愛−』だ。

この3作目では、ティターンズの権力掌握を狙う木星輸送船ジュピトリスのシロッコ(声:島田敏)が活躍。いわゆるラスボスとして、カリスマ的な魅力を発揮する。そして、彼らティターンズと、カミーユ(声:飛田展男)、シャア(声:池田秀一)らが所属する反地球連邦組織エゥーゴの間で、キャスティングボードを握るのが、旧ジオン軍残党アクシズのハマーン・カーン(声:榊原良子)。物語はこの3者の視点でそれぞれ展開する。

早速だが、『機動戦士ZガンダムIII』はすばらしい出来栄えだった。結末を変更したことにより、違和感無く途中の描写を大幅にカットでき、それが結果的にストーリーテリングに余裕をもたらした。駆け足感が強く、編集がズタズタであったパート2から比べると、わかりやすさ、まとまりのよさは雲泥の差だ。

前2作に共通するダイジェスト感もなく、ちゃんと1本の映画として成立している。いくつか明らかにならない要素も残ったが、ギリギリ許容範囲だろう。

富野由悠季作品の最終回らしく、人がバッタバッタと死んでいくドラマティックな展開は健在、破滅に向かう絶望感等がバッチリ表現できている。誰が死に、誰が生き残るのか。原作とどう変わったのかは、未見の方向けレビューである当サイトではあえて語らないが、ファンもこれなら十分に満足できるのではないかと想像する。私は、この展開に大いに感動させてもらった。

モビルスーツ同士の戦いも十分堪能できよう。「最も美しいモビルスーツ」とも言われるハマーンのキュベレイなど、惚れ惚れするような動きを見せてくれる。絵も綺麗だし、迫力はこれまでの作品とは段違いだ。確執あるシャアの百式との戦いの結末は、はたしてどうなるか。

いくつか原作と違って登場しない機種もあるようだが、これはやむをえまい。シロッコの"隠し腕"ジ・Oや、ハンブラビ、バウンドドッグ、パラス・アテネ、ボリノーク・サマーンといった人気の高いモビルスーツは、それぞれ見せ場を用意される。

ラストやそれにいたる道筋には賛否両論があるだろうが、それについてはあえて語るまい。せっかくの最終章、ご自身でお楽しみになっていただきたい。少なくとも、映画としてみるならば、このパート3はとてもよく出来ている。感動的で、急ぎ足もそれほど感じさせず、キャラクターもよく立っている。期待して、劇場に出向いてほしい。



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