『ドラえもん のび太の恐竜2006』55点(100点満点中)
新キャストたちによるドラえもん、新規出発
声優、スタッフが一新され、ほぼ1年。そろそろ視聴者にも「新ドラえもん」が浸透してきただろうということで、いよいよ映画版の登場である。選ばれたのは記念すべき劇場用第1作のリメイク。新キャスト、スタッフに「ここから再び伝説を作るのだ」と気合を入れてもらうためにも、良い選択だったのではないかと思う。オリジナルは80年の作品だから、そろそろリメイクしてもバチはあたるまい。
しずかちゃん(声:かかずゆみ)の前でスネ夫(声:関智一)に恐竜の化石を自慢され、対抗心から化石を探しはじめるのび太(声:大原めぐみ)。ひょんな事から恐竜の卵を発見し、見事に首長竜の子供をかえすことに成功する。ピー助(声:神木隆之介)と名づけ、愛情を注ぎ込んで育ててはいたが、徐々に巨大に育つのを見て、もとの時代に戻すことを決意する。ところがドラえもん(声:水田わさび)とタイムマシンで移動中、突然首長竜を狙う恐竜ハンターが現れ、銃撃を受ける。
ストーリーはオリジナルに忠実。テレビの新ドラえもんになじんだ子供たちは、恐竜の時代における大冒険を大いに楽しみ、普段はいじめっ子であるジャイアン(声:木村昴)やスネ夫たちと、のび太の友情に感動できるだろう。
派手なアクションが増えてきた近年の劇場用に比べると見せ場も少なく、かなりシンプルに感じるが、ドラえもんらしい要素はしっかりと感じられる。飽和気味だった世界観を、締め直す効果はあるだろう。また、本編が地味なためか、所々に異様に力の入ったショットがあったりする。ラストの、タイムパトロール団のタイムワープなど、ドラえもん史上、最もカッコいい場面ではないかと思うほどだ。
テレビ版と同じく、作画などは大山のぶ代時代に長年かけて洗練させてきた旧ドラえもんのそれではなく、原作に近い素朴なもの。キャストを一新した分、見た目だけでも原作に戻したいという意向はよくわかる。ただ、キャラクターは藤子・F・不二雄の漫画版のそれで、背景だけは異様に細かく書き込んだCGアニメ、というのは少々違和感がある。そうしたキャラクターが、カートゥーンのように誇張された動きでドタバタギャグを演じるのは、なんだか無理しているように見えなくもない。
新「のび太の恐竜」は、我々、大山ドラえもんに親しんだ世代で、テレビ版を毎週見ているわけでもない人間からすると、この絵柄の違和感に加え、例の新声優たちの若者ボイスをキャラに当てはめねばならないので、結構大変な作業となる。しかし、そもそも数十年にわたって、アニメ作品に変わらぬものを求める事自体が無茶かもしれない。藤子・F・不二雄の偉大な作品が今でも見られる事だけでも、満足すべきか。とはいえ、あの主題歌だけはどうもいただけない気もするが。