『ダイヤモンド・イン・パラダイス』70点(100点満点中)

アメリカ版、湯けむり連続殺人事件

『ダイヤモンド・イン・パラダイス』は2004年のアメリカ映画で、日本でも昨年の秋ごろ公開される予定だった。ところが、やんごとなき事情で延期となり、今にいたる。かくいう私もこれを試写でみたのはなんと、昨年の10月である。

世界に3つしかないとされる、皇帝ナポレオンのダイヤモンド。そのうち2つを見事盗み出した大泥棒(ピアース・ブロスナン)とその妻(サルマ・ハエック)。彼ら夫婦は、それをもって泥棒稼業から引退、バハマの島で幸せに暮らしていた。ある日、彼らのもとに長年の宿敵であるFBI捜査官(ウディ・ハレルソン)が現れる。彼は、現在島に停泊中の豪華客船にある最後のダイヤを、二人が必ず狙うはずだと当たりをつけて、けん制しにやってきたのだった。

引退したものの、最後のひとつが目と鼻の先にあると聞いて泥棒のプライドに火がついてしまった男、平和な暮らしを乱したくない妻、そしてなんとか二人をとっつかまえようとする捜査官、この3人による二転三転ストーリーが展開されるアクションドラマだ。

だましあい、化かし合いの連続で、はたしてダイヤモンドがどうなるのか、終盤には予測もつかない展開が待っている。こいつはなかなか驚かされる。

優雅な英国紳士ピアース・ブロスナン(=5代目ジェームズ・ボンド)の風貌と、情熱的なラテン美女、サルマ・ハエックのカップルもいい。サルマ・ハエックは有名になってもその巨乳ナイスバディを惜しむことなく私たちに見せてくれる。さぞ自信があるのだろう。まあ、確かにこの人ほど、きれいなカラダをした女優はあまりいない。

泥棒カップルを追いかけるとっつぁんというのは、なんだか実写版ルパン三世の趣きであるが、本作にもちゃんと、ドタバタギャグ&敵味方なれど友情&お色気という、いわゆるアニメ版ルパンと同じ面白さがある。

舞台となる、バハマの風景も最高だ。のんきな泥棒アクションにはぴったりの場所で、見ているだけでうっとりする。映画館に出かけた観客を、仕事を放り出してバカンスにいきたくさせるような魅力がある。

要するにこの映画は、旅行気分を味あわせてくれる気楽なアクション映画ということだ。日本のテレビの2時間サスペンスによくある、湯けむり連続殺人事件的なジャンル、とでもいえばわかりやすいだろうか。殺人事件も名探偵も出てはこないが。

作り手も肩の力を抜いて、楽しく作っているのではないかと思わせる、気軽な作品。しかも、なかなか面白い。週末の夜にぶらっとでかけるには、最適といえるのではないだろうか。



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