『ナイト・オブ・ザ・スカイ』60点(100点満点中)

出し惜しみなしで『トップガン』以上の映像を

『トップガン』をはじめとするスカイアクションムービーは、航空マニアならずとも根強い人気がある。なかでも、一切の無駄を排した戦闘機のデザインは、兵器ならではの機能美があり、それが画面を飛び回る映像を見られるとなれば、誰しも興味を引かれるものだろう。

『ナイト・オブ・ザ・スカイ』は、フランス映画界が気合を入れて作った、本格戦闘機アクション映画。ハリウッド映画でしょっちゅう見かける、F-16、F/A-18、F-111といった米軍機でも、悪役として登場するロシア製のそれでもなく、フランス空軍の主力戦闘機ミラージュ2000が大活躍する。

物語は、英国の航空ショーから始まる。各国の戦闘機が並ぶ絢爛な会場から、仏空軍のミラージュ2000が盗まれる。迅速な調査の結果、飛行中の該当機を発見。空軍の戦闘機が即追尾し、やがて撃墜するが、撃墜した主人公パイロット(ブノワ・マジメル)は、なぜか軍から理不尽な処分を受けてしまう。

空中シーンのメインとなるミラージュ2000は、現実にはすでに後継機ラファールが採用されており、最新機ではないが、無尾翼デルタ式(三角形の大きな主翼のみがついている)の単発機という、個性的なルックスが大変美しい、フォトジェニックな機体だ。フランス空軍全面協力ということで、飛行中の映像はCGなしの、本物である。大変貴重な映像で、迫力も満点だ。

とくに、最初のほうにある、旅客機の下に隠れて飛ぶ不審機を、2機の空軍機が追跡し、ドッグファイトに突入する一連のシークエンスにはすばらしいものがある。飛行機好きは必見といえるだろう。着陸から駐機場に移動する様子など、ディテールを余すところなく映しているあたり、マニア受けもしそうだ。

ただ、異様に気合が入っているこの場面に比べると、その後が続かぬ印象なのは否めない。飛行シーンは確かにどれも素晴らしいのだが、なにぶん本物映像にこだわっているのでカメラワーク、構図、編集の自由度が大幅に制限され、どれも似たようなものになっているのが惜しい。

『ナイト・オブ・ザ・スカイ』は『TAXI』の凄まじいカーチェイス演出で、世界中の映画ファンを唸らせたジェラール・ピレス監督の作品だから、流石に色々と工夫されているのがわかるが、舞台が空となるとやはり限界はある。同じ航空アクションでも先日公開された『ステルス』などは、とんでもないアクティブなカメラワークを実現していたが、あれはオールCGでやっているので本物の迫力には及ばない。どちらも一長一短といったところだ。

『ナイト・オブ・ザ・スカイ』の惜しいところは、本物志向の空中撮影シーンをあまりにもサービス満点で出しまくってしまったために、映画全体としては単調になってしまったことだ。変な話だが、もっと空中戦を出し惜しみして、地上のドラマ部分で盛り上げたら、劇映画としてはよくなっただろう。今のままだと、良くも悪くも空のシーンを見るためだけの映画で終わっている。無論、それでいいという人には何の問題もない。

そのドラマ部は、日本でどれほどの数の人が読んだのかはわからないが、30年前の漫画が原作ということだ。優等生っぽい内容は、少々ユーモアに欠け、退屈な印象。ヒロインとなる金髪の女の子が、キャラとして立っていないのも痛い。とても美人なのに、おとなしすぎる。

そんなわけで、本作は航空自衛隊の広報ビデオ並の本物志向な飛行映像を楽しむ、それを第一義にすべき映画といえる。100分間、飽きるほど見られるから、戦闘機ファンは期待してお出かけのほどを。

 
1/72 ウォーバードコレクション WB-16 ダッソーミラージュ2000C
ミラージュ2000てのは、この飛行機のことです。尾翼がないデザインはとてもスリムで、独特のものがあります。本来、欧州で共同開発する予定だった次期戦闘機開発から、フランスがへそを曲げて脱退し、単独で開発したのがこの機体です。アラブや台湾など、各国で採用されております。
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