『シャークボーイ&マグマガール3-D』40点(100点満点中)

親バカを見せられている気分

『スパイ・キッズ』シリーズのロバート・ロドリゲス監督が、7歳になった息子のアイデアを映画化したファミリー向け3D映画。『スパイ・キッズ3』同様、赤青のメガネをかけて鑑賞する、アナグラフ方式。本来立体映画は、偏光グラスをかけてみる偏光方式のほうが、はるかに立体視効果が高いし、色合いも変化がないので眼が疲れず、あらゆる点で良い。しかし、メガネが使い捨てではない、すなわちレンタル方式なので、子供たちが映画を見た思い出に、赤青の立体メガネを持ち帰れる方が、このジャンルに限っては正義があるという事なのであろう。

あらすじは、空想好きの10歳の少年が、夢でみた冒険物語を、学校で発表するところから始まる。ところが、いじめっ子のクラスメートからはバカにされ、夢日記も奪われてしまう。その翌朝、彼の前に夢の中で活躍するヒーロー、シャークボーイとマグマガールが実際に現れる。彼らの惑星が危機に瀕しており、創造主たる主人公の力を貸してほしいというのだ。かくして彼らは、ロケットでその惑星に向かうのだった。

さて、到着すると、少年の理想の園だったはずの"よだれ惑星"は、見るも無残な氷の惑星に変わっていた。どうやら原因は、子供たちの夢を奪おうとするエレキ魔王らの仕業らしい。わずか45分というタイムリミットのなか、彼らは世界を救えるのか?! ……とまあ、子供映画の定番的なストーリーである。

舞台は荒れ果てた惑星なので、色彩は暗く、どんよりしている。観客の目に見える、赤青メガネによる色合いの劣化に、劇中で一応の理由付けをしているというわけだ。そこから先は、立体映画ならではの仕掛けが満載で、アトラクション的な見せ場が続く。

ただし、この方式の立体映画の弱点である、キャラクターの動きが平面的という点は否めない。特に本作は、背景のほとんどがCGであるから、どうしても役者が「ブルースクリーンの前でパントマイム的な演技をしている」という雰囲気を拭い去ることができない。大人の目には、かなり不自然な映像に写る。

また、3人の子役たちであるが、どうも華がない。ほとんど色のない映像である事もあってか、子供らしい溌剌さが感じられず、魅力に欠ける。

夢の世界が舞台ということで、登場人物は現実世界と共通している。悪役などの脇役キャラクターも、学校の先生やクラスメートなどが二役で演じており、いかにも"夢"っぽい。

もともとこの世界観は、最初に書いたとおりロバート・ロドリゲス監督の7歳の息子が考え出したもの。シャークボーイとマグマガールのキャラクターもしかり、だ。クレジットにもちゃんと、原案として息子の名前が記載されている。子供らしい、自由な発想の賜物であるが、それにしても、そんなものを映画にまでしてしまうとは驚きだ。だいたい、息子の妄想を世界中の人々に見せようだなんて、私にはまったく理解できない世界だ。まさに、究極の親バカ映画といえる。

子供映画にしては、そこそこのクォリティであるが、正直なところ、あまり面白くはない。ロバート・ロドリゲスの才気も、息子かわいさで少々曇り気味か。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.