『悪魔の棲む家』55点(100点満点中)

カップルを怖がらせる程度の役には立つが

「悪魔の棲む家」は、79年に映画化されて以来、長きにわたって続いてきたホラーシリーズだ。といっても、日本での人気はイマイチで、よほどのホラー映画ファン以外からはほとんど忘れられたシリーズとなっている。本作は、実話を元にしたオカルト映画という、独特のムードが米国で大受けしたオリジナルの、26年ぶりのリメイクとなる。

1974年、ニューヨーク州ロングアイランド・アミティビルのその「家」で、事件は起こった。一家の長男が、両親と兄弟たちを次々と射殺したのだ。彼はその後自首したが、「家の声」に命じられたという、謎めいた証言を残した……。それから1年後、格安で売りに出されていたこの物件を、ある一家が買い取ったその日から、第2の悲劇が始まるのだった。

のろわれた「家」のパワーにより、恐ろしい目に会う一家のお話だ。ホラー映画として基本がしっかりとしていて、真面目に恐怖演出をやっているため、「怖さ」は結構ある方だ。オカルトらしい不気味さは、霊と通信できる少女や、徐々に狂っていく父、必死に抗う母、幽霊少女などといった、今となっては何の新味もないが、出しておけばそれなりに格好がつく定番要素によって盛り上げられる。

また、お約束のようにお色気シーンも入る。主演のライアン・レイノルズは、「ブレイド3」に出演していた役者だが、あの作品同様、役者離れした素晴らしい体を晒している。あの、三角筋の張り出した肉体をナチュラルで作り上げたとしたら、相当な才能だ。思わず見惚れてしまった。

79年のリメイクという事もあり、ストーリーやら何やら、基本的な設計自体が古い。基本に忠実といえば聞こえはいいが、もう散々使い古され、誰も驚かないような驚かせ方をいまだにやっているような一面もある。せいぜい、初心者カップルを怖がらせる程度の役には立つだろうが、積極的にすすめたい要素はあまりない。

ただ、『悪魔の棲む家』にとっては、たまたま私が鑑賞した時のタイミングが非常に悪く、気の毒な面はある。なにしろ私がこれを観たのは、「輪廻」(公開中、日本)の試写直後だったのだから。こんなハシゴをする人はほとんどいないと思うから、あまり気にせずスルーしてくれれば良い話だが、実際この2本の演出力には大きな差があった。いかに「輪廻」が良く出来ていたか、私の中では、皮肉にも本作が証明する形となってしまった。



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