『楽園 流されて』70点(100点満点中)
現代的な辛口ドラマ、おすすめだ
お年頃の男女が無人島に流されるというモチーフは、多くの映画作品の中に見ることが出来る、いわゆる"ロングセラー"的な人気ネタだ。中でも、貧乏人ながらサバイバルの知識に長けたたくましい男と、美人で金持ちでタカビーな女が流されるというパターンは、『流されて…』(74年、伊)、『スウェプト・アウェイ』(02年、米)で映画化されている。
今回、日本で映画化されたこの『楽園 流されて』も、その系譜に連なる一本といえるわけだが、そこには前出作品と大いに異なる一面が見て取れる。
ストーリーは単純明快。人気局アナで、このたび参議院選挙に立候補したヒロイン(街田しおん)と、半分ニート気味の若い漁師(榊英雄)が、ひょんな事から無人島に流されてしまう。そこで二人だけのサバイバルが始まるというお話だ。まさに、『流されて…』パターンである。
ところがどっこい、二人の立場は少々変わっている。ヒロインはもちろん、さっさと戻って選挙戦の続きをやらねばならないから当然、何とかして文明社会に帰りたいが、男の方は実は戻りたくない。戻れない事情を抱えていたりする。
そして、決定的にこれまでの作品と違うのは、男女の立場が正反対という点である。『楽園 流されて』のヒロインは、これまでの作品のそれをはるかに上回る、現代的でパワフルなキャリアウーマンであり、魚が取れなかろうが、服が破けようが、男になかなか屈服しない。こちらが驚くような方法で、食料を自前で調達し始める。そして、そこにはまったく悲壮感がない。平然ととんでもない事をやってのける。あるラインを超えてしまえば、女に怖いものなどないというわけか。
逆に、男は半人前の漁師だから、思うように食料を調達できない。いつもひもじい思いをしているのは、男の方だったりする。まあ、現実のサバイバルではそんなものなのであろうが、それよりこの展開、女が常に男をリードするという構図こそが興味深い。女が男より稼ぎ始めたとき、男はかようにもろくなるのだという、非常に現代的なテーマをこの作品は描いているのだ。
そんな男にとって、最後の砦、最後の武器であるセックスで女を組み伏せられなかったら、果たしてどうなるのか。このサバイバル劇の結末は、なかなか示唆に富んでいる。
恒例の濡れ場解説であるが、街田しおんはなかなか興味深いキャラクターを見事に演じきり、ヌードもセックスシーンも辞さぬ熱演である。スタイルも抜群、たいへんそそるお体をなさっている。なお、男の妻役は不二子が演じ、出演時間は少ないが、ご自慢のプロポーションをしっかり見せ付けてくれる。この人の体はバランスがとてもよくて、なんと言うか、良い意味で目立った点のない、男にとっては、長く愛せそうなカラダである。こんな美人二人のハダカをみて1800円とは、実におトクである。
そんなわけで『楽園 流されて』は、まさしく現代的な新解釈の無人島ストーリー。なかなかのオススメといえる。