『天使』30点(100点満点中)
深田恭子の天使姿は一見の価値があるが
『下妻物語』(04年、日)で、とてつもなく似合うロリータファッション姿を披露した深田恭子によると、次に流行るのは天使コスプレなのだそうだ。そんな彼女の主演最新作『天使』は、心温まるファンタジードラマ。桜沢エリカの原作の映像化である。
本作には、何人かの主人公が登場する。たとえば、永瀬正敏演じるシングルファーザーは、恋人(永作博美)がいるものの、幼い娘の事が気になってどうしても先に進めない。内気なコンビニ店員(内田朝陽)には、好きな女の子ができた。ある女子中学生は、学校でいじめにあっている。そんな彼らの前に、ある日ふわふわと天使が舞い降りるという展開だ。
この天使を演じるのが深田恭子。全身真っ白で、キラキラと輝く"天使コスプレ"は、確かに絶品。まさに天使のような可愛らしさである。この天使は風変わりで、好物はジンライム、言葉は一言もしゃべらない。妙に人懐っこい性格で、たとえば男の子の部屋に居候して、四六時中、彼の周りをふわふわと飛び回り、悩んでるときにはキスしてあげたりもする。かと思うと、突然いなくなってしまうという、じつに気まぐれな性質だ。でもベランダにジンライムを置いておくと、またやってきたりもする。まるで、人に慣れたスズメのような天使である。そんな彼女は、決して積極的に人間社会に介入しないが、いつもどこかでやさしく見守り、背中を押してくれる穏やかな存在だ。
肝心の内容であるが、私は原作を見ていないが、たいへんに甘いお話だ。あまりに甘すぎて、私などは見ていて恥ずかしくなってしまった。問題点としては、キャラクター造形にスキがありすぎる。男性キャラなど、たいへんウソくさい。いかにも女が考えた男、ってな感じで、リアリティがまったくない。
ファンタジードラマというものは、ファンタジー要素以外を徹底的にリアルに演出しないと、子供の妄想と同じになってしまう。その点この『天使』は、ファンタジー要素の無い、普通のドラマ部分がお粗末でいただけない。カップルが添い寝しているシーンひとつ見ても、先ほどまでHしてました感が皆無。キミたちの存在自体がファンタジー、になってしまっている。漫画ではアリでも、実写でこれをやってはいけない。
しかも、肝心の天使までもが安っぽいのである。ワイヤーによる吊り感が露骨に出ているし、アニメタッチのCGも、実写との相性がいまいちかな、と思う。雪のシーンは、つもる雪までCGだということで、それは確かに見事なものがあるのだが、役者がはく息が白くないので、観客には違和感が残る。
結局のところこの作品の魅力は、深田恭子がカワイイ、ひたすらカワイイ、それだけだ。彼女は、天使姿が世界一似合う女優だ。とはいえ、あれくらい整ったあどけない顔つきでなければ、彼女の言う天使コスプレなど似合うまい。一般の方が無理に真似をすれば、アダルトビデオ然、となってしまう事が自明であるので、とくに慎重に行う必要があろう。