『僕のニューヨークライフ』60点(100点満点中)
アレン最後のニューヨーク映画?
ウディ・アレンという映画作家は、自らの愛するニューヨークを舞台にした映画を撮る事で知られているが、本作を最後に活動の場をイギリス、ロンドンに移したという。ということで、下手をすると彼の最後のニューヨーク作品になるかもしれないのがこの『僕のニューヨークライフ』、彼自身で脚本も書いたロマンティックコメディだ。今回アレンは出演はするが脇役で、主演はジェイソン・ビッグス&クリスティーナ・リッチの若いカップル。
主人公の若きコメディ作家(J・ビッグス)は、同棲中のガールフレンド(C・リッチ)が、最近セックスに応じてくれず悩んでいる。おまけに彼女の母親は、二人のアパートに突然やってきて、居候をはじめる始末。また、長年の付き合いがあるエージェント(ダニー・デビート)は、ろくな仕事をもってこないくせに、契約更新を迫ってくる。行き詰まった彼は、先輩作家(W・アレン)に悩みを相談するが、ひときわエキセントリックな人物である彼からのアドバイスは、力強くも極端なものばかりで、頼りになるんだかならないんだかわからない。
他人に相談してばかりでなんにも解決できない優柔不断な若者が、アレンやクリスティーナ演じる、わがままで神経症気味で人騒がせな周りの人々に振り回されながら、人生について徐々に悟るというお話。たくさんの台詞と軽快なユーモアで展開する、アレンワールドはいつものとおり。ファンの期待に応える、おしゃれな雰囲気のコメディだ。
俳優と役柄の組み合わせにも違和感はなく、芸達者な人たちの芝居を見たな、という満足が味わえる。
頼りない主人公は、やがて自分で決断するにいたるのだが、そのとたん、それをあざ笑うかのように、事態は急展開を見せる。人生とはこういうもんさ、という監督アレンの声が聞こえてくるかのようだ。私自身、その主張には納得ができた。鬱気味の方などは、この映画をみて、監督が言わんとするテーマを生活に取り入れてみてはいかがであろうか。
肩の力が抜けた大人の余裕を感じる、なかなかの傑作小品である。笑いも的確な線をついているし、アレン作品の中では比較的初心者にもオススメだ。