『レジェンド・オブ・ゾロ』55点(100点満点中)

爽快感に欠ける

快傑ゾロを題材にした作品はいくつかあるが、この『レジェンド・オブ・ゾロ』は同じ監督、キャストによる98年の映画『マスク・オブ・ゾロ』の続編だ。

ときは1850年のアメリカ。カリフォルニア州が31番目の州になるか否かを決める、重大な投票がいま、行われようとしている。貧しい者のヒーロー、ゾロことアレハンドロ(アントニオ・バンデラス)は、息子が大きくなりつつあることもあって、ヒーローを引退するはずであったが、選挙を邪魔せんとする勢力から守るため、あと少しだけ"ゾロ"を続ける事を妻(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)に告げる。

古典的かつベーシックな、冒険活劇である。わざわざ7年前の作品の続編を作るからには、何か特別なアイデアでもあるのかと思ったが、そういうことはないようだ。よく言えば定番モノの安心感、悪く言えば単なる二番煎じ続編だ。

ヒーローが年を取り、家庭を持つというお話で、最愛の息子に正体を言えず、不本意ながら凡夫を演じる事で悩んだり、身を案じる妻からは引退を要求されたりと、どこかで見たような、つまりは観客誰もが予測できるような範囲のエピソードが描かれる。

911後のアメリカ映画の主流派たる家族モノであり、残酷描写の一切ない健全ファミリー映画でもある。とはいえ、剣アクションが基本の映画で、一切敵を切るシーンがないというのは、やはり物足りない。ゾロは、剣はふるうが実際に敵を倒すときは、足で蹴るとか、階下につきおとすとか、そんなやり方のみなのだ。こうしたアクションシーンには、まったくカタルシスが感じられない。持ってる剣で人を斬る事は、ここまで不自然に描写を避けるほど、不健全なことなのだろうか。

そのくせ、ゾロが最後の敵を倒すやり方などは、じつに残酷でおぞましく、非人道的な方法である。あれがOKで、チャンバラがNGだなんて、どこか判断基準が狂っているとしか思えない。

決して出来が悪いわけではないが、アクションシーンの見せ場は全般的に平凡で、特筆すべき点はない。個人的には、爆発の炎くらい、CG以外でやれなかったものかと思う。爆炎をできの悪いCGで描かれてしまうと、かなり萎える。

ゾロの奥さん役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズは、前作に出演したあとに大出世した女優だから、今回は出番が多い。アクションシーンもそこそこ見られる程度にはこなしている。いまや大スターとなった彼女の存在が、この続編の企画にGOサインを出た原因の一つであろうことは、想像に難くない。

『レジェンド・オブ・ゾロ』の良い点は、とにかくカッコいいアントニオ・バンデラス、ユーモラスな愛馬トルネード(との楽しい絡み)、そしてジェームズ・ホーナー(『タイタニック』を初めとするアメリカ映画音楽界の巨匠)による音楽だ。

全体的にあまりぱっとしないが、それでもカップルたちが、デートの中で2時間を楽しく過ごす役には、十分たってくれるだろう。今週公開の中では、これでもまあまあな部類に入る。



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