『プライドと偏見』65点(100点満点中)
格調高い映像美と、無邪気な娘たち
1940年に最初に映画化され、英国では高品質なテレビムービー版が95年に作られるなど、人気の高いジェーン・オースティンの原作「高慢と偏見」を再映画化したもの。
舞台は18世紀末のイギリス。このころ、女性には財産相続権がなく、誰と結婚するかで人生が決まる時代だった。そして、キーラ・ナイトレイ(「パイレーツ・オブ・カリビアン」のヒロインでブレイクした人気女優)演じる主人公一家は、なんと5人姉妹。彼女をはじめ、美しく好奇心旺盛な姉妹たちの恋物語を、英国の美しい風景をバックに描いた作品だ。
古びた家具や衣装さえも美しい、格調高い雰囲気のなか、無邪気でかわいらしいヒロインたちが生き生きと描かれている。
中心となるのはもちろん、キーラ演じるヒロインで、彼女はこの、見ようによってはガチガチで不自由な時代のなか、誰よりも自由を愛して生きている。他の姉妹や母親が当然のごとく肯定している、「生活のためには、愛が成熟していない段階でも結婚はありえる」といった考えについても、彼女は唯一否定している。自分らしさを大事にする、恋愛至上主義者、つまり、現代人がもっとも感情移入しやすいキャラクター設定といえるだろう。そんな彼女にとって、近くに引っ越してきた貴公子の親友ダーシーは、プライドばかりやたらと高く、鼻持ちならない存在だ。絶対この男とだけは、結婚なんてありえない……はずだったが。
決して甘いばかりのラブストーリー、ロマコメではない。背景には、この時代ならではの厳しさがあり、姉妹たちがそれに巻き込まれる場面もある。とはいえ、全体的にはとても穏やかでほのぼのとしたムードで、あまりに美しい風景(と女優たち)にうっとりしながら、ゆったりと物語を楽しむべき作品といえるだろう。
ストーリーは、だいたい想像できるものと思うが、少々退屈で中だるみする。『ブリジッドジョーンズの日記』の原点といわれる原作ではあるが、コメディではないので、同じものを期待していってはいけない。
個人的には、終盤における父親役ドナルド・サザーランドの演技に感服した。それまで劇中でほとんど描かれなかった、娘を嫁に送り出す父親の安心感を、見事に表現したこの場面。ただただ、感動であった。