『THE 有頂天ホテル』70点(100点満点中)

のんびりユルユルと観るべき映画

正月気分を引きずって、いまだに仕事モードに入れない……そんな人々にピッタリなのが『THE 有頂天ホテル』。『古畑任三郎』シリーズ等の脚本家で知られ、劇作家としても有名な三谷幸喜監督の最新作で、大晦日のあるホテルを舞台に、宿泊客らの騒動を描いた群像喜劇だ。

スキャンダルから身を隠す代議士(佐藤浩市)や、その元愛人(松たか子)、高級娼婦(篠原涼子)、さらには大物演歌歌手(西田敏行)といった、個性的な連中が巻き起こすトラブルの数々を、主人公の副支配人(役所広司)ら従業員が的確にさばいていく。

主役級が勢ぞろいしたキャストや、ホテルのフロアを丸ごと再現したセットの豪華さは、間違いなく邦画最大級。しかし、これだけのヒトとモノを揃えながら、物語はしょっちゅう横道にそれ、その都度ナンセンスなギャグを挟みながら、だらだらユルユルと進んでいく。舞台劇によくあるくだけた構成で、いかにも三谷作品らしい。

要するに、「何も考えず、楽しく笑って帰ってね」というわけだが、このノーテンキさが、正月ボケの頭にはありがたい。テンポの良さや抑揚のあるストーリー、心躍る見せ場や感動を求める人にはまったく向かないが、疲れた胃には七草粥、なんて習慣があるように、年末年始の超大作に翻弄された脳みそには、このくらいユルい映画を、のんびりと鑑賞するのがちょうど良い。



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