『七人のマッハ!!!!!!!』85点(100点満点中)

世界中のあらゆるアクション映画の中でも、トップクラスに位置する

タイのアクション映画は、『マッハ!』の成功により世界中の映画ファンの注目を浴びることになった。そりゃそうだ。あの傑作アクションムービーは、それまでCGやワイヤーを使ったインチキくさい動きに辟易していた人々に、卓越した肉体の動きだけがもつ迫力を思い出させてくれたのだから。

たしかにCGやワイヤーワークを使えば、わずかな訓練期間で、どんなにドンくさいアイドルの女の子を使っても、そこそこのアクション映画を作ることができる。しかし、人々が求めていたのはそんなまがいモノではない。並外れた運動神経を持つ者による、本物の動き、本物のアクションなのだ。

そして、再びその期待にこたえてくれるのがこの『七人のマッハ!!!!!!!』。とてつもなく安直な邦題はともかく、本作は『マッハ!』のアクション監督パンナー・リットグライによる、まったく『マッハ!』とは関係ない内容の、リアルアクション映画である。

ちなみに原作は、パンナー・リットグライ監督自身がかつて製作し、主演した同名の低予算作品。ジャッキー・チェンに憧れていた監督が、アクション映画に対する情熱のすべてを注いだこの作品は、当時まだ子供だったトニー・ジャー(「マッハ!」主演)に大きな衝撃を与え、アクションスターを目指させるきっかけにもなった。

主人公の刑事(ダン・チューボン)は、テコンドーのチャンピオンでもある妹につれられ、ある村へ慰問に出かけた。そこには妹のほかにも、タイ国の誇るトップアスリートたちが多数訪れていた。だが、そのとき突如として武装ゲリラ集団が乱入、いたいけな村人たちを容赦なく撃ち殺していく。やがて彼らは拘束され、政府との交渉の人質にされるが、怒りに燃えた主人公とスポーツ選手らは、村人とともにゲリラ相手に立ち上がるのだった。

サッカー、ラグビー、体操、セパタクローといった、ごくごく平和な競技の選手たちが、自分たちの種目独特の能力、技を使って、完全武装のゲリラ軍団と戦う……なんてストーリーを聞いたときには、これは間違いなくおバカ系の映画だろうと思っていた。

が、そうではなかった。実際のところは、スタッフ一同大真面目に作ったシリアスな作品であった。それでも、おバカ要素満載ではあるのだが。

見所は、もちろんアクション一本! ストーリーなど二の次三の次というやつだ。まあ、これくらい潔いほうがアクション映画は面白い。なんたってこの映画、あまり細部にこだわって見ていると、頭の中にハテナマークが並んでしまう。とくに、国歌が流れたとたん村人一同が奮い立つ愛国的な展開のあたりなど、ツッコミ所満載で面白いのだが、この際無視することをオススメする。

主演のダン・チューボンは新人だそうだが、この人は本当にすごかった。『マッハ!』に主演したトニー・ジャーと比べても、まったく遜色はない。むしろ、こちらの方が壮絶なスタントをこなしているのではないかとすら思える。

ロケット砲やミサイルなど、一部の演出にCGを使ってはいるが、アクション自体はすべて生。あまりに危険な場面ばかり出てくるので「こりゃ、間違いなく撮影中、何人かは死んでいるな」と思わせる。凄まじくハイレベルなスタントショーだ。

たとえば、わずか1mちょいだけ離れて伴走しているトレーラーの間の地面に、なんと人間が転落する場面がある。落下場所が数センチずれたら後輪に轢かれて即死だ。これを見たとき私は、「いくらなんでもここだけはトリック撮影だろう」と思ったものだが、この場面を含め、すべての大アクションを、実際に役者が真っ正直に演じていることが、エンドロールのメイキング映像でわかる。これには本当にぶったまげた。

オープニングの、斜面の村をトレーラーが走り抜けていく場面などは、ジャッキー・チェンの傑作『ポリス・ストーリー』を超えてやる、という宣言にも見える。それだけの自信を感じるし、実際いくつかのアクションは、あの作品のそれを凌駕しているのではと思わせるほど見事な出来であった。スタント自体もとてつもなく高度だし、カメラワークもハイビートの音楽も、アクション映画をカッコよく見せるツボをしっかりと押さえている。

格闘場面では、スポーツ選手が、競技の個性を出した動きで敵と戦うという発想はよかったが、前半のドラマで選手と種目のつながりをもっと強調して、観客に印象付けておいたらなお設定が生きてきたのではと思う。

いずれにせよ、『七人のマッハ!!!!!!!』は、現在見ることの出来る世界中のすべてのアクションムービーの中で、間違いなく最高峰に位置する一本である。これにお金を払わずして、何にお金を払うのか。見るなら絶対に大画面、映画館で。それが鉄則といえるだろう。

 
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こちらが本文中でも紹介している、うわさのタイ製アクション映画です。映画界を揺さぶる、リアルアクションの衝撃。必見の一作ですよ。
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