『イン・ハー・シューズ』65点(100点満点中)

主演二人がイマイチだが、脚本はいい

全米でベストセラーになった同名小説をキャメロン・ディアス主演で映画化。監督は『L.A.コンフィデンシャル』のカーティス・ハンソン。

ルックス抜群で、(一夜の)男にはまったく不自由しないが、難読症のためまともな職につけない不安定な妹(C・ディアス)。容姿はイマイチながら弁護士として堅実な人生を歩む姉(トニ・コレット)。まるで正反対の二人は、互いにないものをコンプレックスとして感じていた。そんなある日、ようやく気の合う恋人を見つけた姉だったが、居候中のグラマラスな妹を彼に紹介してから、幸せの歯車が狂い始める。

『イン・ハー・シューズ』は、多くの女性が共感できるであろう、等身大のキャラクター二人の苦闘と成長を描いた人間ドラマだ。

姉は、仕事は成功しているが人生のパートナーに恵まれていない。お金があるから、靴はクロゼットいっぱいに並んでいるが、衝動買いした靴はどれひとつ足にしっくりこない。まるで彼女の人生を象徴しているかのようだ。

逆に、妹は男ならいくらでも寄ってくる美人だが、何一つ手に職がない。どっちもどっちだが、妹はもてるといっても遊び目的の男しか寄ってこないし、そろそろ美貌も下り坂。深刻なのはこっちの方だ。

やがてこの妹は、自業自得なのだが、最大の理解者たる姉をも失うことになる。そして最後にたどりつくのが、存在すら知らなかった祖母(シャーリー・マクレーン)の待つフロリダ。彼女が祖母の存在を知るあたりもなかなかドラマティックで、観客をわくわくさせる。妹はこのフロリダの祖母の元で、人生の転機を迎えることになる。他人に必要とされる喜びが、彼女を徐々に変えていく過程には説得力がある。

同時に、愛する妹を追い出してしまった姉も、それを契機に大きなチャレンジをはじめる。こうして、二人で一人のようなこの姉妹は、まったく離れた二ヶ所で、それぞれ第二の人生を開始するというわけだ。非常にポジティブな空気の流れるさわやかなストーリーで、見ていて二人を応援したくなる。

……のは確かなのだが、手放しで誉めたくなるほどではなかった。確かに脚本の出来は申し分なく、よく女二人の心理を描けている。物語も感動的でいいお話だ。

ただ、肝心の二人を演じる役者がイマイチなのだ。一言でいうとこの二人からは、コンプレックスに悩む様子を感じることが、ほとんど出来ないのである。まさか演技が下手というわけではなかろう。この二人の役者がよほど根がポジティブな人で、それが無意識ににじみ出てきてしまっているのか、どうも雰囲気が違うのだ。

たとえばキャメロンを見ていると、「ルックスはそこそこだが、本当にいい男からは相手にされず、職もなく、しかも美貌の衰える日に怯えている」といった微妙なラインを軽く超えてしまっている。いうならば、「自身満々、他者を圧倒する勝ち組のオーラ」が出まくりといった感じだ。圧倒的な美のアドバンテージが、役作りを凌駕してしまっている。輝きすぎて、暗さがまったくない。

トニ・コレットも、「キミは、本気でルックスに悩んでるんか?」といいたくなるほど自信たっぷりに見える。この二人の様子は、いかにもセレブのお芝居、ってな感じで現実感がない。また、主要な二人がそんなものだから、男のキャラクターなんぞを見ても、「あんなヤツいねえよなぁ」なんて気持ちがチラっと頭をよぎってしまって入り込めない。途中で行われる結婚式の演出すら、私には何だか非現実的に見えてしまって、どうにも共感できないものがあった。どこもかしこも芝居じみているのである。もう少し、地に足をつけて人物を描き、見せてくれればよかったのだが。

そんなわけでこの点数だが、内容自体は悪くない。あまり細かく見ず、気楽な気持ちで見に行けば、きっと満足できるレベルにある。演技よりもストーリーを追う方を重視して、細かいトコは気にせず見れば十分楽しめると思う。

イン・ハー・シューズ
原作本の日本語訳版はこちら。女性が主人公で、その成長を丹念に描く物語は、やはり女性向きなのだと思います。主人公たち同様、30代〜くらいの女性にうけているようです。


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