『SAW2/ソウ2』80点(100点満点中)

あの傑作のパート2で、ここまでやれれば上出来

2004年のサンダンス映画祭で絶賛を浴びたシチュエーションスリラー『ソウ』の正統なる続編。監督は新人のダーレン・リン・バウズマンに交代し、前作の監督らは製作にまわった。

前作で明らかになった連続殺人事件の犯人、通称"ジグソウ"がまた例の殺人ゲームをはじめた。しかし、現場に残された手がかりからアジトが判明、主人公の刑事(ドニー・ウォールバーグ)はSWATとともに突入、見事ジグソウを拘束する。ところがジグソウは、まるで警察の突入を予期していたかのように不敵な態度を崩さない。その直後、隣の部屋に数々のモニターが発見される。そこには不気味な部屋に監禁された8人の男女が写っていた。そして、まったく理不尽なことに、その中には主人公刑事の息子が含まれていたのだった。

『ソウ2』の物語は、ここからジェットコースターのように休みなく展開する。ひとつは、モニターに映った部屋の場所をなんとか突き止めようとする警察の物語。8人のいる部屋には神経ガスが充満し、一定の時間がたてば全員が死亡するとジグソウは告げる。悪趣味なことに、モニターの横にはカウントダウンするデジタル時計まで置いてある。

科学捜査の力やプロファイリング、ジグソウ本人に対する詰問等で、主人公ら捜査陣は必死に彼の企みに挑戦する。あらゆる手段を講じ、何とかして犯人から情報を引き出そうとする会話劇がスリリングだ。

もうひとつの話は、実際に監禁された8人側のサバイバルアクション劇。彼らもガスによるタイムリミットの仕掛けについては最初に知らされている。知恵と勇気を振り絞り、この理不尽な状況からなんとか脱出を試みるが、そのたびにジグソウの仕掛けた悪辣極まりない罠にはまり込んで行く。しかし、私たち観客にとって一縷の希望は、このメンバーの中にかつてこのゲームに生き残った事のある女性アマンダ(ショウニー・スミス)が含まれていること。前作でもちらっと登場した彼女が、この続編では主役級の存在として脱出劇のキーマンとなる。

あれほどの画期的な設定と意外なラストをもつ前作の続き、しかも犯人の正体がすでにバレてしまっている状況で、この続編を作るのはさぞ難しかったことだろう。しかし、『ソウ2』はちゃんと前作並の大どんでん返しを持っているし、新しい舞台設定もじつに魅力的だ。

じつはこの脚本、元々は今回の新監督が日本の『バトル・ロワイヤル』から着想を得て、オリジナル作品にすべく用意していたものだという。それを目ざとく見つけたスタッフが、ちょいと改造すればソウの続編に使えるという事で、前作の監督らと協力して仕上げたというわけだ。まあ、ゼロから考えるよりは、そこそこ出来上がったものを改良したほうがいいものができる事もあるだろう。

しかし、考えようによっては、この脚本をオリジナルとして出していたら、たいした話題にはならかったのかもしれない(つまり、前作ほどの良い出来ではないという意味だ)。無名の監督と役者で作って公開したならば、恐らくヒットは望めまい。ただし、そこに「ソウ続編」の冠がつけば別だ。また「ソウ」側にしてみれば、続編のアイデア捻出に難儀していたときに、ソコソコの脚本が現れた。前作の記憶が薄れないうちに製作(このパート2はわずか25日間で撮影を終えた)、公開できれば商売としてはおいしい。いわゆる利害の一致、というやつだ。

まあいずれにせよ、大事なのは観客にとって面白いかどうかだ。そういう意味ではこの続編はおおむね成功といえるだろう。前作以上に残酷なショックシーンの数々に目を奪われていると、最後にスカーンと騙される快感が待っている。私もいいところまでは推理を当てていたが(当てさせられていた?)、この結末までは予期できなかった。こいつはなかなか気持ちのいいものだ。

マイナス点としては、犯人側の動機や、監禁された者たちの行動に論理的な説得力が薄く、少々都合が良すぎる部分。トリックについても同様だ。前作は十分な映画的説得力をもっていたが、パート2は少々その辺の処理が雑だ。完成度は大きく劣る。前作のような、「あらゆるシーン、台詞に意味がある」といった綿密な脚本とはいいがたい。単に、上っ面の面白さだけがある印象だ。

それでも私は今週、真っ先にこの作品をすすめたい。スリラー好きをわくわくさせる設定、驚くに値する結末の意外性、途中の面白さなど、娯楽映画に必要な要素がすべてそろっているからだ。残酷な描写が苦手な人以外で、知的なパズル的スリラーが好きな人は、ぜひ映画館に行ってみてほしい。



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