『ドア・イン・ザ・フロア』55点(100点満点中)

巨大ボカシが物語世界を断ち切ってしまっている

米国の作家ジョン・アーヴィングの自伝的な要素を含めた作品『未亡人の一生』の前半部分を映画化したもの。あるトラウマを抱えた一家の悲しみと再生を、コメディタッチも含めた穏やかな描写で綴った人間ドラマ。

成功した児童文学作家(ジェフ・ブリッジス)とその妻(キム・ベイシンガー)は、4歳の一人娘(エル・ファニング)と海辺の自宅で裕福に暮らしていたが、数年前のある事件以来、妻は心を閉ざしてしまっていた。やがて彼らは町なかにもう一つ部屋を借り、一日交代で2箇所ですごすという別居生活をはじめることにした。さらに夫は作家志望の高校生を助手として雇うが、あろう事かその少年は作家の妻にひと目ぼれしてしまう。

作家が少年を雇った真の目的や、タイトルが象徴する人生の暗黒面(=誰しも床下に秘密を持っている→それにつながるドアがタイトルの意味)、それに主人公がどう対峙するかがわかる結末まで、少々淡々としたドラマが続く。

役者はおおむね良いが、特に子役のエル・ファニングは芝居上手だ。姉のダコタはだいぶ大きくなってしまったが彼女はまだ5歳。外見もそっくりだし、どうやらあと数年はこの天才姉妹の子役ぶりを楽しめそうだ。

主人公の妻と高校生少年の、激しい一夏の恋が描かれているが、その描写を台無しにするボカシが多数のシーンに入っている。おかげでキム・ベイシンガーなどは、ヌードひとつ見ることも出来ない。だいたいボカシなんてものが入ると、どうしてもそっちにばかり目がいってしまい、「隠すからにはその下にトンデモないものが映っているのかも?!」などと余計な想像をめぐらせ、妙にそのシーンがエロい印象になってしまう。これでは演出者の意図も見失ってしまう。

小説の途中部分にあたる映画版の結末は、ちょっとホロリとさせるうえに、まとまりの良いところで切られていてなかなかだ。この作品の後半はかなりスゴイ展開になるので、前半で切ったのは、少なくとも映画の出来にとっては大正解と思われる。

文学作品を映画化したものとしては、なかなか良く出来ている。原作者のジョン・アーヴィング自身が指名した監督だから、よくその意図を映像化できたのではないかと思われる。原作のファンの方はぜひその出来映えを確かめにいってみると良いだろう。

未亡人の一年 (上)
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