『旅するジーンズと16歳の夏』75点(100点満点中)

美しい風景の中で展開する4つの感動物語

アン・ブラッシェアーズのベストセラー『トラベリングパンツ』の映画化。

16歳になる4人の少女は、母親同士がマタニティ教室で一緒になって以来の大親友。彼女らはこの夏、初めて離れ離れになる。リーナは祖父母の住むギリシャへ、カルメンは別居中の父と過ごし、ブリジットはメキシコのサッカーキャンプに参加、そしてティビーは地元のスーパーでバイトする。そんな4人はある日不思議なジーンズをお店で見つける。それは、体型のまったく違う4人にフィットする魔法のジーンズ。彼女らは早速入手すると、一人1週間の期限を設け、まわし穿きするルールを定める。

4人の少女の一夏の物語をそれぞれ追いかけた、切なく感動的な青春ドラマ。この映画に登場する「ジーンズ」は、全員のお尻にフィットする不思議なジーンズであるが、それ自体は特別何かファンタジックな奇跡を起こすわけではない。4人の間を行ったり来たりしながら、物語の進行役となるのみである。

とはいえ、このジーンズの存在によって、観客の興味は持続し、4つのストーリーを混乱なく見ることが出来るのだからうまい構成だ。

4人の少女たちは、いかにもティーンエイジャーらしく不器用で、ある部分は純粋で、迷いながらこの夏を過ごす。どの子の悩みも、そして成長過程もとても共感しやすく、多くの人の心を打つに違いない。

4人を演じる若い女優さんは、だれもかれも非常に上手い。ルックスもかわいらしく、画面に登場したとたんに観客の好感を得てしまう、そんな魅力を持っている。

4つのストーリーがあるということは、見せ場もクライマックスも4つあるということ。終盤それらが畳み掛けるように訪れると、感動も4倍である。とくに素晴らしいエピソードとしては、ティビーというパンク少女が、ある女の子とバイト先のスーパーで出会うことによって、大きく人間的な成長を遂げる話を挙げておきたい。

ある事情によって、16歳の自分よりはるかに人を見る目をもったこの小さな女の子。ティビーはこの子とすごすことで、社会に対するいらつき、反抗心が消え、他者を見下すのではなく、"理解する"大切さを知る。全体的に抑えた演出と演技により、このパートの感動は果てしなく大きなものとなっている。必見だ。

4人はそれぞれこの夏に変わり、成長する。しかし友情は決して変わることがない。定番テーマならではの安心感に、存分に感動の涙を流せる一品だ。

余談として、この映画は4人が別の場所で過ごすお話なので、観客もメキシコやギリシャなど、まったく違った風景を楽しむことが出来る。とくにギリシャの美しい風景は、そりゃもう今暮らしてるこの場所を明日にでも捨てて移住したくなるくらいの魅力がある。こういう擬似体験も映画の大きな魅力なのだなと、久々に感じさせてくれた素晴らしい撮影であった。何はともあれ、今週はこの作品がイチオシである。青春映画が好きな人は、絶対に見て損はない。

トラベリング・パンツ
原作本です。この映画はたぶん、相当数の人が気に入ると思います。その後は恐らく、私同様この傑作シリーズ小説を読みたくなる人もいるでしょうから、先にリンクを張っておきましょう。表紙がかわいいのでギフトにもいいかも。


連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.