『娼婦たち』55点(100点満点中)

娼婦たちに共感を持つことができる

売春婦という職業にスポットをあて、さまざまなインタビューを中心としたドキュメンタリーと、一部ドラマも挿入したスペインの実録作品。短いドラマ部分にはダリル・ハンナら有名俳優も登場する。

さて、映画の大部分は実際の娼婦へのインタビューがしめる。ここに登場する娼婦たちは、年齢、性別、人種、そして高級娼婦から路上で客を取る最底辺の売春婦まで、じつにバラエティに富んでいる。美人もいれば男の子もいる。日本人もいれば黒人もいる。若い子もいれば当然その逆もいる。やせた子もいれば太った人もいる。金持ちもいれば貧乏人もいる。まさに人間社会の縮図だ。

また、娼婦に限らずその周辺の人々、たとえば客や、ポン引きのような男、組織をまとめるボスのような連中にも、話を聞いている。こうしたインタビューは、断片的につなげられ、CGをふんだんに使った背景と組み合わされ、独特の不思議なムードで繰り広げられる。合間には娼婦たちのヌードも多数挿入される。ほとんど無修正なのでヘアも丸見えである。

彼女たちの語る内容も様々で、誘拐さながらに無理やりつれてこられ強制させられている女性から、セックスが大好きでやっている能天気な娘、仕事に誇りを持っている人など、一見共通点はみられない。やたらと明るいアニメ声の日本人娘が、人種別のペニスのサイズ話をケラケラと話していたりする。そんな色々な話を聞いているのもなかなか興味深いもので、それほど退屈はしない。

ただし、こうしたインタビューは彼女らの内面に深く突っ込んだものではなく、そのほとんどはあくまで営業用、上っ面の話をしているに過ぎない。だから、それぞれの話に意外性はなく、まあそんなもんだろうという感想になってしまう。娼婦といえど、労働者という意味では我々と何もかわらないのだから当然だが、刺激を求める観客にとっては物足りない。

ラストには、とてもさわやかな演出が施されており、見終わった後とてもいい気分にさせてくれる。世界で最も古い職業で、人間社会の闇の部分を担う彼女(彼)たちに、穏やかな共感を持つことができる作品になっている。



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