『愛についてのキンゼイ・レポート』45点(100点満点中)

邦題はマヌケだが、いたってマジメな伝記映画

セックスに関する様々な調査結果をまとめた「キンゼイレポート」で知られる実在の動物学者アルフレッド・キンゼイ博士を描いた伝記映画。

インディアナ大学の動物学の助教授、アルフレッド・キンゼイ(リーアム・ニーソン)は、教え子のクララ(ローラ・リニー)と結婚したが、童貞&処女の二人はうまくセックスすることができない。なんとか専門家の助言でその危機を乗り越えたものの、キンゼイはこの分野の知識がいかに未開拓なものか思い知る事になる。やがて彼は、膨大な数のアメリカ人をインタビューし、性についての徹底調査を行うべきだと考えるようになる。

この作品はいたってマジメな伝記映画であり、ついてはこの邦題はアホとしかいいようのないセンス無きものである。感動のドラマでもなければ恋愛モノでもない、これはキンゼイ博士の人柄と、その偉大な研究を淡々と私たちに教えてくれる映画作品なのである。彼の少年時代からその相当変わった結婚生活、研究における苦労や挫折、希望といったものを丁寧に追っていく。

キンゼイレポートというのは、若い人は知らないだろうがかなり有名な性の研究書で、一般にも発売されて大ベストセラーになった。男性版、女性版とあり、アメリカにおけるカップルの夫婦生活の平均的頻度から性癖の数々、ペニスのサイズなど、セックスにおけるありとあらゆる統計学的な研究を行ったことで知られている。

映画ではその研究の詳しい中身や経緯を描いているので、非常に興味深い裏事情を知ることができる。とくに面白いのはキンゼイ博士が開発した「インタビュー法」で、いかにして嘘を見抜ぬくかや、見栄や間違いを言わせないようにするかについての心理学的なアプローチなど、その高度な手法に驚かされる。これだけ見ても、ずいぶんと工夫したレポだったんだなあとよくわかる。

キンゼイ博士自身も様々な実践研究をしていたようで、奥さんをわざと他の男に寝取らせたり、同性愛について知るためにわざわざ男性とHしてみたり、研究者同士でスワッピング(パートナー交換)してみたりと大変なものである。ここまでくると感心を通り越してアホである。しかし、彼らに対するこの時代(40〜50年代)の保守的な人々の猛烈なバッシングも今見ると同様にバカバカしい。見比べると、やはりキンゼイ博士のような極端なリベラリストも世の中には必要なのだなあとよくわかる。

また、この映画は日本史上初めて(?)、勃起した男性器と、女性器との結合場面が無修正で公開されるという映画でもある。その場面はもちろん、学術的な講義の場面なのでいやらしいものではないが、実際スクリーンにアップになるとなかなかの衝撃である。とりあえず、この場面を修正せずに通した映倫の皆さんの英断には敬意を表するとしよう。

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