『ノロイ』70点(100点満点中)

綿密な取材で明らかになった怪奇実話作家の失踪事件、驚愕の真実

ある怪奇実話作家の失踪事件の謎に迫る、ドキュメントタッチのオカルト映画。

2004年4月、ある怪奇実話作家の自宅が全焼し、妻の焼死体が発見される事件がおきた。作家本人もそれ以来行方不明となった。この事件の謎を探るため、彼が完成させたばかりのビデオ「ノロイ」の検証がはじまった。

映画はこの作家、小林雅文のこれまでの仕事の軌跡をたどるとともに、最後のビデオ作品「ノロイ」を詳しく観客とともに検証する形になっている。小林雅文という作家(ビデオには出演もしている)の独特の落ち着いたムードがなかなか魅力的で、各地のオカルト現象を彼がカメラマンを引き連れ探求していくビデオの内容自体が非常に面白い。

この映画を見る観客は、彼が謎の自宅全焼事件の後に失踪し、2005年の今になっても発見されていない事実をすでに知っているわけだが、失踪時期から考えて、小林氏が最新ビデオ作品の取材、撮影中に何らかのトラブルに巻き込まれたことは確実だ。よって、このビデオ「ノロイ」の取材テープの中に現れる数々の不審な現象、登場人物や奇妙な符合、偶然の一致といったものに大変な興味を引かれるだろう。

やがてビデオを検証していくと、とてもそのままでは発売できぬであろう事件や新事実が浮かび上がり、その謎が徐々に解けていく。この過程のサスペンスは相当なもの。アンガールズや飯島愛といった、番組出演者の証言なども織り交ぜ、淡々とドキュメントタッチで提示されるその驚愕の事実の数々に、強く引き込まれる。

ラストでは、件の自宅全焼事件の際に残されたビデオ映像に偶然写った恐ろしい真実が発見される。これをどう判断するかは観客の判断にゆだねられる。

ちょいと困るのは、手持ちカメラによる映像部分の恐るべき画面のブレ。熱中してみていたこともあって、私は本気で気分が悪くなった。ブレすぎ危険、である。試写室を出た後、エクセルシオールカフェのソファに倒れこむように座り込んでしまったことをここに報告しておく。

次から次へと見せ場がきてまったく飽きることはない。オカルトという題材を扱っている作品ならではの怪しさも、楽しめる人にはたまらない。ちょいとやりすぎな演出も多々あるが、まあ許そう。興味がある人は、決して余計な検索などを行わず、このレビューと小林雅文氏の公式サイトだけ読んで、早く映画館にでかけよう。



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