『劇場版 NARUTO 大激突!幻の地底遺跡だってばよ☆』70点(100点満点中)

テレビアニメの映画版としてはかなり本格的な出来

週刊少年ジャンプに連載中で、TVアニメも大人気の『NARUTO−ナルト−』映画版第二弾。

舞台は“火の国”と“風の国”の国境。主人公のうずまきナルトは迷子のペットをある村に届けるという、いつにもまして間抜けな任務の途中、何者かに襲われる。激しい戦闘の末、敵とナルトはがけ下に転落する。残された仲間の奈良シカマルと春野サクラは、ナルト捜索に出かけるが、そこで巨大な移動要塞に遭遇する。

さて、短編をあわせると3本目の劇場版NARUTOだが、今回はかなり本格的な冒険アクションを送り出してきた。ちなみに前作で大活躍だったカカシ先生は今回登場せず、その代わりに風の国「砂隠れの里」の我愛羅、カンクロウといったシリーズキャラクターの忍者たちが登場する。普段のライバルたちと、より巨大な敵を前に共闘するというのはジャンプ漫画伝統のパターンでなかなか胸踊る。

さて、最初に書いたとおり『劇場版 NARUTO 大激突!幻の地底遺跡だってばよ☆』は、よくある「TVアニメのお手軽映画版」の枠を大いに超えている。これは、とくに大人のファンを喜ばせることになるだろう。

背景美術や動画のクォリティの高さ(後半やや乱れる場面もあるが)はTVのそれとは明らかに違い、大画面に耐える出来。特に戦いの場面は見事なもので、ラストのボスキャラとのそれは実に力の入った演出で、大いに盛り上がる。

ストーリーもなかなか丁寧な語り口で、決して子供にこびていないオーソドックスかつ意外性のある展開は見ごたえがある。謎めいた敵登場人物の抱える暗い過去、そして彼の心に最後巻き起こる葛藤など、相当大人っぽい内容のお話だ。

まあ、それでも健全度100%で落とすあたり、あくまで子供向きの枠内には収まっている。単なるオトナの観客である私にはちょっとばかし不満が残るが、この点はもちろんマイナスというわけではない。この映画はあくまで主に子供たちのために作られたものなのだから、これでいい。ただ、もっと高めの客層をターゲットにこの話を作り直したとしても、かなりよいものになっていただろうとは思う。

そんなわけで、今回のNARUTOはかなりオススメ度が高い。テレビアニメの映画化としては、恐らく最高レベルの出来映えと言ってよいだろう。夏休みのアニメ作品の中で、最初にチョイスして間違いのない一本である。



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