『山猫は眠らない3 決別の照準』60点(100点満点中)

マニアックさが抜けて、薄味のバディムービーになった

超一流のスナイパーの活躍を描くシリーズ第三弾。

米陸軍きっての狙撃手ベケット(トム・ベレンジャー)に、かつてのベトナムの戦友を抹殺せよとの指令が下る。彼はベトナムで悪事の限りを尽くし、テロリストの養成まで行っているという。他人の手に下るよりはと命令を受けたベケットは、現地の若手刑事でありNSA(米国家安全保障局)の局員でもある男(バイロン・マン)と協力し、調査をはじめる。

このシリーズは、銃声の方向やタイミング、リロードや狙撃銃調整の細かいやり方など、異様にマニアックなディテールにこだわったファン垂涎のスナイパー映画だ。今回も、のっけから50口径アンチマテリアル・ライフルの代表格、バレットM82A1や、アキュラシー・インターナショナル社の最新狙撃システム(銃のみならずスコープやらなにやらを含め、狙撃システムと呼ぶ)、AE Sniper Rifle L96が画面に登場する。(私はそれほど銃に詳しくないので確認ミスの可能性アリ)

ただし、全体的にみると非常にうす味に変化している。若手刑事と二人協力してターゲットに迫る過程は、ハリウッド映画によくあるバディムービー(二人組の主人公が活躍する映画)とかわらない。その分、一般人にも見やすくなったが、パート3にもなってそんな路線に変更する意味があるのかどうかはわからない。

この3は、一言でいえば「ゴルゴ13のように手の痙攣に悩む主人公が、ゴルゴ13のような奇抜な狙撃方法で敵を倒す」映画だ。非常に映画的、派手さのあるパート3になった。その分、狙撃のリアリティ、身を切るような静寂の中の緊張感といったものはスポイルされた。トム・ベレンジャーが少々太りすぎで、彼の動きのキレもスポイルされた。その代わり脂肪は増えた。

それでも純粋にカッコいいし、ゲーム感覚の狙撃シーンはいまだに(類似作品が少ないため)新鮮だ。ああ、なんと不謹慎な感想。彼とコンビを組む若者との、擬似父子的関係もさわやかに描かれている。

さて、この映画の評価は微妙なところだ。普通のアクション映画としてみればそこそこだが、山猫ファンにとってはこの一般向け映画への変更がどう写るか。デート映画としても見られるような『山猫は眠らない』が受け入れられるかどうか、注目して行きたい。

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シリーズ第1作です。その独特のムード、狙撃手という存在に的を絞った内容、じつに男くさいハードコアなアクション映画です。


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