『宇宙戦争』35点(100点満点中)

スターウォーズが公開されたら吹っ飛ばされてしまうだろう

トム・クルーズ主演&スティーブン・スピルバーグ監督という最強コンビによるSF超大作。H・G・ウェルズ原作による53年の同名映画のリメイクとなる。

主人公の港湾労働者(T・クルーズ)はこの週末、離婚した妻との間にできた息子と娘(ダコタ・ファニング)とともに過ごすことになっていた。しかし、天空からの恐るべき侵略者により、彼らの平和と地上は破壊される。

結論から言うと、『宇宙戦争』は「コドモ一人勝ちの映画」だ。コドモというのは、トム・クルーズの娘役を演じる天才子役のダコタ・ファニングのことで、文句なしに彼女はこの映画に出てくるほかの誰よりも演技力がある。ショーン・ペン、デンゼル・ワシントンでさえ、彼女と競演すると食われてしまうのだから、トム・クルーズでは話にならないとは思っていたがこれほどとは……。正直私は、タコみたいな宇宙人だとかはどうでもよくて、上映中、あの子役の中に何星人が入っているのか、そちらのほうが気になっていた。

ストーリーに関しては、平坦の一語。トムさんとダコタさんがひたすら逃げ回るだけで、それ以外には何もない。圧倒的なパワーを前にした人類の無力さを描くためとはいっても、あのアイデアの宝庫のようなスピルバーグ監督が、これほど単調な演出をするというのは意外だ。

無論、映像はすごい。CGで作り上げたスペクタクルの迫力はたいしたものだ。だが、何しろ展開にバラエティがないからすぐに飽きる。

トム・クルーズも、いつもはもっとインパクトを与えてくれるのだが、今回は久々にはずした。何しろ港湾労働者という役柄が似合わない。いくらなんでも社会の最下層に近い人民の役は彼にはあわない。顔つきがやさしすぎて、荒くれ男のイメージではない。おまけに今回は、それにプラスしてダメ父親の役である。何をかいわんやだ。(一部わかりにくかったようなので補足すると、普通、アメリカ映画で港湾労働者が出てくる場合は、先述した階層の人間であるという意味での記号として扱われることが少なくない。そして、本作もその例に漏れない。港湾労働者を差別する意図で書いているわけではないので誤解なきよう。彼らが主人公である点は問題ないが、トム・クルーズはミスキャストであるという意味だ。)

だからこそ、ダコタちゃん一人勝ちなのである。彼女のすさまじい仕事ぶりを見られなかったならば、私はあやうく初日のお台場メディアージュ1800円を支払ったことを後悔するはめになっていただろう。ダコタさんが悲鳴をあげるたび、本気でこの子、ひきつけでも起こすんじゃないかと気が気ではなかった。ボクはキミの顔が一番怖かったよ。

それにしてもこの映画館、普段からすいているのかどうかわからないが、この超大作の初日だというのにせいぜい4割の入りである。指定席はほぼゼロ。ガラガラである。マスコミ向け試写回数を大幅に制限し、メディアでの批評を一切禁止するなどという秘密主義で挑んだパブリシティだったが、完全に失敗に終わったといえるだろう。(とはいえ、これは私の体感上にすぎず、実際は初日の興行収入はかなり好調だったようである。まあ、本作は先行上映を行っていないので、次週以降の落ち込みが気になる点に違いはないが……追記)

これにくらべ、同じ宇宙戦争ものである「スターウォーズ3 シスの復讐」の出来ばえは相当なものだ。とてもじゃないが、内容では比べ物にはならない。来週こちらが公開されたら、「宇宙戦争」は吹っ飛んでしまうのではないかと危惧する。

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オリジナルの53年版です。宇宙人の恐怖という意味では、こちらのほうがよく表現できているかもしれませんね。


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