『最後の恋のはじめ方』30点(100点満点中)

デートの合間の暇つぶし

ウィル・スミス(「インディペンデンスデイ」のパイロット役など)と、エヴァ・メンデス(「ワイルド・スピードX2」など)という黒人スター二人が共演したロマンティックコメディ。

主人公(W・スミス)は、恋愛下手な男に女性の口説き方を教える“デート・コンサルタント”。今日もさえない会計士に、雇い主のセレブをデートに誘う恋愛テクを伝授したばかり。そんな彼だが、偶然知り合った新聞記者の女性(E・メンデス)とデートを重ねるうち、どうやら本気で彼女が気になってくる。

映画はウィル・スミスの恋愛指南トークからはじまり、やがて「セレブ女性と会計士」「主人公と新聞記者」の二つの恋の行方を追っていく。結論から言えば『最後の恋のはじめ方』は、じつに軽い。ロマコメというジャンルはおしなべて軽っちいものであるが、それにしても軽すぎる。上記のストーリー紹介を読んだ人が想像するとおりのお気楽アメリカ映画だ。

爆笑というほどではないが普通にクスクス笑う程度のコメディ要素はあるし、デートハウツーものとしても楽しく見られる。スター二人の存在感もあるから、彼らのファンであれば退屈はしないだろう。しかし、この映画が入場料金分ほどの満足を与えてくれるかといえば疑問だ。あまりに安直すぎるつくりに、正直私も脱力気味である。

一風変わった男と自立心旺盛な女が会話の応酬でせめぎあい、そのうち誤解から疎遠になり、最後には和解する。ロマコメの雛型通りの予定調和で安心感を得たい方が、たいした期待もせず時間つぶしに見る映画というわけであるが、それにしてももう少し工夫できなかったものか。駄作感はないものの、これではなんの面白みもない。ソツのない出来ということもできるかもしれないが、せっかく映画を見に行ってこの出来じゃ、少々寂しい。

まあ、あまり多くは語るまい。いずれにせよこれは、映画館の前でポスターを見ただけでどれを見るか決める普通のカップルたちに対し、その後のデートの邪魔にならないよう作られただけの映画だ。それ以外の用途で見る作品ではない。



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