『ザ・インタープリター』50点(100点満点中)

国連ロケが切っ先を鈍らせたか

トップ女優ニコール・キッドマン(「ムーラン・ルージュ」ほか)が演技派ショーン・ペン(「アイ・アム・サム」の父親役など)と競演した政治サスペンスドラマ。

主人公の国連通訳(N・キッドマン)は、某国の大統領暗殺計画を国連本部内で偶然耳にする。通報を受けやってきたシークレットサービス(S・ペン)は早速彼女の警護にあたるが、やがて彼女が何か隠していることを察知する。

いくつもの言語を操る通訳である事から、言葉による平和解決を信じる主人公と、力による解決を信奉する現実派のボディガード。この二人の対照的な登場人物のぶつかり合いを軸に、暗殺計画を防ぐストーリーが進行していくのかと思いきや、主人公の過去が徐々に明らかになるにつれ、話は意外な方向に進展していく。

芸達者であるこの二人が出てくると、それだけで重厚感ある政治映画になるあたりがすごい。 ショーン・ペン演じるボディガードはつい先日妻をなくしたばかりという設定であり、アフリカ出身の白人であるヒロインとロマンスのひとつでも起こるのかと思ったが、そういうナンパな方向にはならない。

そうした安直な筋書きにしなかったのは良かったが、それでも『ザ・インタープリター』が煮え切らないのは、硬派になりきれないツメの甘さにある。たとえば国連外交の限界が叫ばれる現在、多くの人々はその役割にたいし、すでに大きな期待は持っていない。この映画もそこを踏まえてか、国連に対して期待を寄せながらも現実の厳しさのほうを重点的に描いてはいる。

しかし、国連本部で初めてロケをさせてもらった「恩」があるためか、私などが思うもっと突っ込んでほしいレベルまでの批判的見地はもっていない。せっかくいいムードの政治映画でありながら、妙にリベラルといいうか、道徳的なところに話を落ち着かせてしまうあたりが『ザ・インタープリター』の限界といえる。

無難といえば無難だが、こうしたジャンルの場合、もっと社会の闇をえぐるような鋭さが欲しい。娯楽にしては地味過ぎるし、社会派というほどのキレもない。どうにも中途半端で不満が残るのが、この映画の率直な印象である。

というわけで、この映画を見る際はあまり社会派の面には期待せず、両スター役者のもつ雰囲気、出てくるだけで画面に大作感を出してしまうほどの存在感を中心に楽しんできたらいいと思う。そして、「現実だったらこうかもしれない」といった風に、終わった後に今の世界情勢というものについて、気軽に話しあってみるのもたまには悪くない。

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