『交渉人 真下正義』70点(100点満点中)

二番煎じかと思いきや、なかなか本格的

フジテレビの人気TVドラマ『踊る大捜査線』シリーズのいち登場人物であった真下正義を主人公にした番外編。このように、ある映画の脇役をメインにした外伝を作ることを専門用語でスピンオフという。またの名を二番煎じ。

地下鉄用最新鋭ハイテク試験車両が何者かにハイジャックされた。犯人は、警視庁初の交渉人でロス市警帰りの真下(ユースケ・サンタマリア)を交渉相手に指名した。東京の地下鉄網を荒らしまくるハイジャック車両の目的は何なのか、やがて関係者に戦慄が走る。

『踊る大捜査線』の映画版は、1,2あわせてのべ2000万人が見たお化けシリーズだ。実写邦画の興行新記録も持っている。そういう膨大なマーケットがあるから、『交渉人 真下正義』もそこそこ話題を呼ぶだろう。

『交渉人 真下正義』は、一言でいうと都市型テロを描いたアクションもの。大阪や神戸でロケをした地下鉄の場面など非常に迫力があり、まるでハリウッドのアクション映画のような派手さがある。全路線の運行を統括する地下深くにある指揮センターに、真下率いる捜査チームと地下鉄会社のスタッフが集まる風景は、まるで軍事モノをみているような緊迫感がある。

犯人の心理面を分析する真下チームが地下でテロリストと対決する一方、地上では寺島進演じる、昔かたぎのたたきあげ刑事が物理的な捜査で犯人に迫る。主人公の真下は現場で汗臭い仕事をしている連中を尊敬、信頼しており、自らのプロファイリング技術を過信していない。そこには『踊る〜』シリーズに共通する庶民主義のようなテーマが流れている。

たとえば乱れまくったダイヤを直すのは、昔ながらの手書きダイヤの達人であるベテラン鉄道マン。映画からは彼らローテクの職人たちに対する敬意を感じられる。ハイテクの危機をそうしたオヤジたちが救う展開は見ていて大変気持ちがよい。

それでも一部少々やりすぎで、ちょいと気恥ずかしくなるところもあるのだが、この程度なら許せるというものだ。わざとらしい織田裕二が出ていない事が明らかにプラスに働いていると私は思う。ユースケ・サンタマリアの自然な演技はとてもいい。

『踊る〜』シリーズを見ていない人でも、これ一本で問題なく楽しめる。私は本家『踊る大捜査線』映画版よりも、面白さはこちらの方がずっと上だと思う。GWの娯楽映画の中では相当上に位置する一本だ。

ところで兵庫県尼崎市、JR福知山線の電車脱線事故は、電車パニックものであるこの映画の宣伝サイドにもかなりの混乱を与えたようだ。マスコミからの問い合わせも殺到したらしい。私もテレビ番組内でこの映画を紹介する予定だったので、東宝に電話して「公開延期するのか」と聞いてみたが、彼らは「変更なしです」と即答した。私は、あれだけの大惨事のあとだからてっきり延期だろうと思っていたので意外な思いであった。

そういえば同じ東宝の宣伝のお兄ちゃんは、「みなさん安直企画っていいますけど、本気で作ったんですよぉ」と言っていた。見てみて納得、確かになかなか良くできている。これならこのサイトの読者にも自信を持ってすすめられる。

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