『コックリさん』20点(100点満点中)

韓国ブームのあだ花のごとき一本

『友引忌(ともびき)』、『ボイス』に続く、韓国の人気若手監督アン・ビョンギによる「ゴースト・ストーリー3部作」完結編。……といっても、各作品はまったく別個のもので、それぞれのストーリーにつながりはない。

いじめに悩む転入生の少女は、いじめっ子たちへ呪いをかけるため友人を巻き込んで「コックリさん」をはじめる。すると翌朝、本当に連中の一人が変死体で発見される。

あまりに幼稚で涙が出る。この監督は本当にやる気があるのかと思うのが、この映画での稚拙な演出の数々。死体やら何やらを全部画面の中に入れ、観客に見せてしまうものだから怖さに奥行きがまったくない。見せないことで恐怖を与えるというのはホラー映画演出の基本中の基本だが、この作品ではまったく考慮していないようだ。

何しろユーレイを出し過ぎだ。たとえば、怖い音楽が流れて登場人物が「あっ、何か後ろにいそう!」と思って振り返ると、本当にそこに幽霊がいるのである。そんなシーンばかり見せるものだから、5回目くらいでいいかげんに飽きた。この映画の幽霊は、下町でベンツを見かけるより頻繁に出てくるのではないか。

そして、毎回それに驚く女優の演技も見事なまでにワンパターン。驚く場面だけコピー&ペーストしてるんじゃないかと思う。しまいには絶叫する顔をみても、アホかとしか思えなくなる。

物語の背景は変な村の呪いの話だが、その手の話が出てくりゃ「どうせ悲惨な死に方をした奴のタタリだろ」と相場は決まっているのだから、脚本家はもっと工夫しなくてはいけない。その思い込みを逆手に取るとか、もっとやりようがあるだろう。これでは意外性のひとつもありゃしない。

それでも「コックリさん」という、身近かつ新鮮な題材への興味(日本語の呪文があるのはなぜだろう?)と、被害者の死に方のエグさのおかげで最初の30分間はまだマシなのだが、その後の平凡な展開で90分間持たせるのはハッキリいって無理だ。

あと主演3人の女優さん、美人ではあるが顔の判別がどうにもつきにくい。執刀医が同じなのかどうか知らないが、これならいっそ髪の色をアニメみたいに赤、緑、黄色にわけてやったらどうか。そうすりゃ誰が絶叫してるんだかよくわかると思うが?

しかしいくら韓流ブームとはいえ、こんな作品を公開するのは行き過ぎだ。こんなものがヒットするようなら、作り手にも宣伝側にも日本の観客はちょろいと思われること間違いない。こちらとしては、もう少しマシな韓国映画を持ってきてほしいものだ。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.