『映画 ふたりはプリキュア マックスハート』55点(100点満点中)

元気いっぱいの美少女ヒーローアニメーション

いたいけな子供たちからオトナのオトモダチまで大人気の美少女アニメ映画版。なぜかはよくわからないが、方々から「お前が書かないでどうする」といわれたので、がんばって書くことにした。

勉強よりもスポーツが好きな美墨なぎさ(声:本名陽子)と、成績優秀ながらも天然という雪城ほのか(声:ゆかな)、二人は同じ中学校に通う友達同士だ。彼女たちは光の園からやってきた可愛らしい小動物のようなメップルとミップルによって変身能力を与えられ、光の使者プリキュアとして邪悪な敵を倒しつづけている。

さて、映画版ではこの二人がいわゆる傭兵として「希望の園」へ行き、その国の宝物を悪から守るというお話だ。もちろん「マックスハート」であるから、九条ひかり=シャイニールミナスも二人と一緒にそこへ向かう。(でもあまり見せ場はない)

「ふたりはプリキュア」はその筋では相当な人気を得ているアニメ作品だ。映画版を一見したところ、かつてのおジャ魔女なんとかいうアニメのように、あからさまにその手のファンに向けて作られているようには見えない。とはいっても、決してアニメファンのツボを外していないあたりはさすがだ。

キュアブラックに変身する美墨なぎさは、いわゆるボーイッシュキャラというやつで、外見に反して大変女らしい一面を持つ性格に設定されている。そのギャップを味わうのが通のやり方だ。

声は「耳をすませば」で聖司くんにストーキング、いや愛されるヒロインを演じた本名陽子。そういえば当時彼女が通っていた某一流都立高校では、クラスメートが日々サインをせがまれて大変だったという話だ。

相方のキュアホワイトこと雪城ほのかは、頭いいのに天然という、要するに男どもの理想、永遠の憧れ的キャラである。そんな都合のいい女がいるわけないだろといいたくもなるが、この手の作品には必ず一人や二人こういうヒロインが存在する。さすが日本アニメは夢を売る商売である。売る相手が間違っているような気がしないでもないが。

まあ何にせよ、こうした定番のキャラクター設定が人気を呼んでいる現状をみていると、アニメファンという人々は実に保守的なのだなと感じる。昔から萌え系アニメの骨格はほとんど変わっていない。本来の客層である子供たちからも、下手するとそれ以上のマーケットであるオトナのお客様からも、適度な距離感を保って作られている。

ここで『ふたりはプリキュア』映画化記念として、超映画批評ブレーンの面々にインタビューを試みてみた。質問は「この作品の魅力とは?」である。

一人目、某国立大に通うスポーツ&アニメ好きな爽やか女子大生
「まったく見てないんだ。幼い、くだらないタイプのアニメかと思って(笑) ナルトやハガレンみたく、すこし深いのや、ワンピースやこち亀みたいに勢いがあるのが好きなの。プリキュアは幼い女の子向けじゃん?」

二人目、都内私立校に通うアニメ好きの真面目な女子小学生
「ほのかちゃんもなぎさちゃんも可愛いから好きだよ」

三人目、○○萌え〜が口癖の30代男性
「ボクは同人には絶対手を出しませんよ」

こうしてみると、日本という国は面白い。一本の子供アニメでオトナから子供まで楽しんでいるのだから。

さて、映画の話に戻ろう。ふたりのプリキュアの戦い方は、魔法や武器ではなく肉体を使った格闘アクションだ。これは意外にも新鮮で、戦い方がシンプルな分、演出はダイナミック。日本リミテッドアニメの伝統であるスピード感ある動きや、遠近感を強調した構図をより楽しめるようになっている。これはなかなか迫力があって良い。

ストーリーは子供向けアニメらしく毒のないもので、期待されたロマンスが入るわけでもなく健全なハッピーエンディングに向かってよどみなく突き進む。見せ場を段階的に配置して、きちんとラストの戦いを盛り上げる。実にベーシックでしっかりしたアニメという印象だ。

こういう映画はどう点数をつけるべきか迷ってしまうが、テレビアニメの初映画化としては、まあ及第点といったところだろう。お子様が見たがっている方も、お兄ちゃんが見たがっている方も、そろって楽しんできてもらえると幸いである。ちなみに私は黒の方がいいかな。



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