『マスク2』30点(100点満点中)

「マスク」にここまでのVFXはいらないか

1994年の大ヒットコメディにして、俳優ジム・キャリーの出世作『マスク』の続編。しかし前作の主人公ジム・キャリーやキャメロン・ディアスは出演せず、変わりにジェイミー・ケネディが新しい主人公ティムを演じる。

漫画家志望の主人公(J・ケネディ)は、愛犬が拾ってきた奇妙なマスクをつけたとたん、内気な性格から180度変身、歌って踊れるスーパーヒーローに生まれ変わる。会社主催の仮装パーティーでは人間離れしたパフォーマンスで社長に一目置かれ、帰ってからは妻とスゴイ一夜を過ごす。そして、その夜が原因で妻はついに妊娠、出産。おまけに生まれたベイビーは最初からスーパーパワーを備えていた。

やがて愛犬までもがマスクをかぶり、飼い主の愛情を独り占めすべく、ナチュラルパワーの赤ちゃんとド派手な戦いを繰り広げるという、遊び心いっぱいの第二弾だ。パート2とはいっても前作との筋書き上のつながりはない。かぶったものに力を与える例のマスクが、今度は別のオジサンのトコにいって騒動を巻き起こすというお話だ。よって、楽しむために前作を見ておく必要はまったくない。

とはいっても、わざわざこのパート2だけ見る人がどれほどいるのかは疑問だ。前作は相当良くできたコメディだったが、この続編はメインのアイデアはもちろん、マスクの赤ちゃんが生まれた!というアイデアにもまったく新味がない。あっという間に先が読める内容だ。

ILMによる特殊効果が10年分進歩したというが、そもそもこの映画はそれ目当てに見る映画ではない気がする。まずストーリーのための必要物としてスーパーマスクがあり、その演出のためにCGを使うわけであるが、えてして映像技術自体がメインのオカズになりがちだった当時としては、『マスク』のVFXは実にまっとうな使われ方をしていた。そして今回、最新のCG技術による『マスク2』を見て思ったのは、いまやこの技術は完全にオーバースペックであるということだ。この映画には、10年前に見ることができた、あの程度のCGがあれば十分だ。まあ、あのころのジム・キャリーの顔芸が、下手なCGより迫力があったというだけかもしれないが。

いまや押しも押されもせぬハリウッドトップ級の人気者になったそのジム・キャリーやキャメロン・ディアスを呼んでこれず、別の役者で似たようなお話を作るのでは、残念ながらただのお手軽映画と呼ばれても仕方あるまい。



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