『映画クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶブリブリ3分ポッキリ大進撃』35点(100点満点中)

アクション重視の本作だが、それ以外の要素が弱くて不満

いわずと知れた人気TVアニメシリーズの映画版最新作。

まったくいつもと変わらない野原家に、ある日突然「ミライマン」を名乗る生命体がやってきた。肉体をもたない彼は、とりあえずそこにあったソフトビニール怪獣に乗り移り、野原家の面々に事情を説明する。なんでも時空の乱れにより怪獣が続々出現。数分後の未来に行って誰かが3分以内に倒さなければ、この世界にも怪獣たちが現れるというのだ。かくして野原一家の怪獣退治大作戦が始まった。

ミライマンの力のおかげで、未来世界では一人だけ望むヒーローに変身することができる。会社でも家でもまったくうだつのあがらない父ちゃんをはじめ、ここぞとばかりにヒーロー、ヒロインになりたがる野原一家。怪獣が弱っちい間はそれでも良かったが、やがて本当に強い怪獣が現れると……というストーリーだ。

笑いとアクションと涙の3本柱で楽しませてくれる構成は過去の作品と同じだが、この最新作はかなりパワーに欠ける。また、ほとんどが怪獣と野原一家それぞれとのバトルシーンであるため、子供たちはきっと楽しいと思うのだが、一緒に行く大人はちょいと退屈してしまうだろう。

特にこのアニメの熱烈なファンたる私としては、笑いが少ない点がどうしても不満だ。笑いがないとラストの泣きにも没頭できないものであるから、こちらを期待する向きにもつらいところだろう。ネネちゃんや風間くんら幼稚園児仲間が出てこないのもややさびしい。

クレヨンしんちゃんシリーズはここいらで原点に戻り、カスカベを舞台にしたシンプルでリアルな生活感あるコメディドラマを追求してほしい。映画だからといって何も毎回SFにする事もあるまい。一番得意なことを堂々とやってくれればそれでいい。

ところで、中国ではニセモノのクレヨンしんちゃんが先に登録商標をとったため、本物が締め出されているというバカげたニュースが先日流れた。グッズその他の被害は10数億円だという。まったくもってふざけた国だと、あきれて言葉もない。



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