『失われた龍の系譜 トレース・オブ・ア・ドラゴン』30点(100点満点中)

どこまで信用できるかは???

ジャッキー・チェン一家の秘密を赤裸々に描いたドキュメンタリー。

香港の大スター、ジャッキー・チェンは、家族想いの男で知られるが、今まで一人っ子だとされてきた。ところが母の病気をきっかけに、父が突然衝撃の告白をする。「おまえには4人の異母兄弟がいる」

この告白を、ジャッキーが自分の家族の記録ビデオにするつもりで、知り合いの監督に撮ってもらったものを膨らませて、公開にこぎつけたのがこの『失われた龍の系譜 トレース・オブ・ア・ドラゴン』だ。一家のプライバシーに突っ込んでいるためか、香港や中国本土では上映されず、アジアでは日本がはじめての公開となる。

ジャッキー自らが主演して劇映画にする企画もあるというが、父親が自ら国民党の工作員だったと名乗り、共産党批判を行っているこの内容では、まず中国ロケの許可は出まい。結局どこで作るにしても、このドキュメンタリー本編ほど赤裸々な内容では作れないだろうと私は感じる。

中身は、ジャッキーの父親へのインタビューがメインで、そこに補足として4人のジャッキーの異母姉弟らのインタビューがはさまれ、各種の資料映像を重ねるというベーシックな構成になっている。

問題はこの父親の証言の信憑性だが、彼は撮影中も飲んでいたというくらいの無類の酒好きであり、いつも赤ら顔で身振り手振りを交えて大声で語る様子はインチキ中国人そのもの。話も大げさになりがちで、信用していいものかどうか頭をひねる。

横で聞いているジャッキーにしても、父が自慢話をはじめるたび苦笑いしてヤレヤレ、といった表情で、衝撃の事実をきいている緊張感など微塵もない。のんきなものである。

南京大虐殺で家族が殺されたとか、日本兵が若い女性を片っ端からつれていき、しまいには老女までも慰みものにしたなどという話にいたっては、なにをかいわんやである。まあ、このあたりは酔っ払いのたわごと程度に聞いておくのがベターだろう。

とはいえ、文化大革命での過酷な体験など、戦中戦後の中国近代史についての証言には見所も多い。この時代の中国に興味がある人がみれば、それなりに楽しめるだろう。逆に、ジャッキーファンが楽しめるような要素は少ない。

ジャッキーは、この映画の利益は孤児たちのために役立てたいと話している。長年そうした活動を続けている彼らしい考えだ。そんな彼に寄付をしてもいいって方は、ぜひ映画館にどうぞ。

意外とハマるのがジャッキーの歌声。『失われた龍の系譜』の中でもカラオケを母のために歌っている
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