『火星人メルカーノ』70点(100点満点中)

残酷描写がクセになる危険な一本

アルゼンチン製の大人向け長編アニメーション。

火星人のメルカーノは、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで暮らす無職の宇宙人。ホームシックの彼は、盗んだノートパソコンでネットに接続、ウェブ上にバーチャル火星コミュニティを作った。やがてメルカーノはそこで大手IT企業社長のオタク息子フリアンと出会い、チャットで盛り上がる。すっかり仲良くなったころ、フリアンの父がメルカーノのバーチャル火星に目をつける。社長は火星人の技術力を悪用して、大もうけを企んでいたのだ。

『火星人メルカーノ』は素朴な絵柄ながら、内容は社会風刺を含んだ強烈なブラックコメディで、多数登場する残酷描写も非常に激しい。失業問題をはじめとするアルゼンチンの社会問題を火星人の視点から描いており、かの国のことをあまりよく知らない日本人にとっては興味深い内容が盛りだくさんだ。

風景やセリフから感じるラテン風味が新鮮で、シンプルな絵柄とユーモラスな動き、表情には麻薬性とでもいうべきものがある。きっと、はまる人はどっぷりハマってしまうだろう。テンポのいい展開や突然ミュージカルになるといったナンセンスさも魅力だ。爆笑はないが、ヤレヤレといった苦笑いをふんだんに味わえる一品といえる。

惜しむらくは、公開劇場が極端に少なく、今のところ東京と大阪以外の方は劇場で見ることが難しいという点だ。だから運良く近くにいる方は、ぜひ見にいってみてほしい。わずか75分間の作品だが、十分な満足が得られるはずである。



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