『プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング』50点(100点満点中)

あの美しい世界にもう一度、って方へ

若手女優アン・ハサウェイと往年のミュージカルスター、ジュリー・アンドリュース(「メリー・ポピンズ」)共演のティーン向けロマンティックコメディ。タイトルのとおり「プリティ・プリンセス」の続編となる。

ただのドン臭いアメリカ少女だったミア(A・ハサウェイ)がプリンセスとしてジェノヴィア国にやってきてから5年、彼女はゴージャスな暮らしを満喫していた。ところが、21歳になったミアが王位を継承するためには、なんと「30日以内に相手を探して結婚する」という条件がつけられていた。

監督が大ヒット作『プリティ・ウーマン』のゲイリー・マーシャルなので、本作もプリティな邦題がつけられ、確信犯的な宣伝マンによって「プリティシリーズ3作目」なんていわれているが、原題は「THE PRINCESS DIARIES 2」なので当然なんの関連もない。関連があるのは前作「プリティ・プリンセス」だけで、これはもう完全な続編だ。舞台は前作のラストから5年後ということで、キャストも設定も丸ごと受け継いでいる。

この続編では、ジュリー・アンドリュース演じる女王とそのボディガードの恋の結末と、主人公の王女のお婿さん探しがダブルで進行する形になっていて、まあ普通のロマコメとして安心して見られる格好になっている。往年の映画ファン向けサービスで、ジュリー・アンドリュースが歌うシーンもちゃんとある。

このシリーズは、役者と演じるキャラクターのマッチングが完璧なので、たわいもない内容なのにそこそこ見られるのが特徴だ。アン・ハサウェイといえば王女さま、というくらいのはまり役だし、J・アンドリュースの女王ぶりもしかり、だ。

今回は欧州にある架空の小国ジェノヴィアがメイン舞台になるが、美しい町並みをみていると舞浜のディズニーシーを歩いているような楽しい気分になれる。考えてみればコイツはディズニー作品だから、そのうちかのテーマパークにホントに出現しそうで怖い。「パパー、わたしおひめさまー」とかいう子供らが続出するのだろうか。いずれにせよこれは、見た人を楽しくさせるための映画であるから、このような美術面の役割は大きいものなのだが、その点は合格といえる。

さて、今回は前作最大のポイント、「ブサイク少女が超ゴージャスなお姫様にヘンシ〜ン!」というネタがないので(最初からお姫さまなので)、ごくごくフツーのロマコメである。よく作れたものだと関心するくらいのムリヤリ続編で、ある意味こいつを商売にしてしまうハリウッドのみなさんには感心する。

先述したジェノヴィアの居心地よい町並みや女王の恋の行方、ちょこっと涙を誘うエピソードを織り交ぜて、娯楽映画として成立させてしまうのだから大したものだ。だからといっておすすめ、というほどのものではないが。

とにかく、未見の方はまずはDVDなどで前作をみることからはじめよう。その世界観が気に入ったという人なら、この第2作では背景世界や登場人物を掘り下げているのでソコソコ楽しめるだろう。そうでない人は、わざわざすすんで見るほどではない。以上をチェックした上で、映画館にいってもらえれば間違いはない。なおエンドクレジットの最後の最後にメッセージがあるので、それを見てから席を立つことをすすめておく。



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