『アウト・オブ・タイム』50点(100点満点中)

普通過ぎてどうにも……

スティーブン・セガールやジャン=クロード・ヴァン・ダムらに続けとばかりに、最近はB級(?)アクションスターへの道を進んでいるウェズリー・スナイプス主演のアクション映画。

ボスニア紛争参加時のある事件がトラウマとなっている元特殊部隊隊員(W・スナイプス)は、戦死した戦友の妹と待ち合わせたレストランで何者かに人違いされ、薬物を打たれてしまう。それは「XE」という、潜在能力を覚醒させる幻覚剤で、8時間以内に解毒剤を投与せねば、死の副作用が訪れる代物だった。

タイムリミットまでに解毒剤をもつワルを調べだし、組織へ殴りこんで対決する……という、どこからどうみてもよくあるパターンのアクション映画。ありがちな格闘アクションや銃撃戦に、ちょっぴり拷問シーンをトッピング。ド定番のレディメイド的映画である。

主人公はトラウマを抱える元軍人なのに、打たれた幻覚剤がなんと「あらゆる感覚を鋭敏に研ぎ澄ます」という効能のある薬剤だからさあ大変。身体能力が10倍ほどにアップしたのはいいが、トラウマのつらさも10倍という、なんともお気の毒なことになってしまう。しかしそれを克服しつつ、彼は悪に立ち向かうのだ。

主演のウェズリー・スナイプスには、ヴァン・ダムやセガールのような“アク”、というか個性が薄いから、このシナリオでは苦しい。彼のファン以外のお客さんにアピールするのは少々期待薄か。アクションシーンも少なめで、少々物足りない。かといってつまらないというわけでもない、要するに普通過ぎるのだ。

ウェズリー・スナイプスが今後もアクション志向で行くのかどうかはわからないが、その場合は、まず強烈な個性の確立が必要になるのではないか。どの出演作を見ても同じ役にしか見えないセガールとまではいかずとも、ぜひパンチのある役柄をつかんでもらいたい。



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