『カンフーハッスル』80点(100点満点中)

お馬鹿な見た目と本格的な中身を持つカンフーアクション

『少林サッカー』のチャウ・シンチーが、再び監督&主演で送るカンフームービー。

時代は文革直前の中国、舞台は郊外の貧乏アパート。ある日、住民とチンピラが揉め事を起こすが、あっさり住民側が撃退してしまう。やがてこの事件はギャング団とアパート住民の全面カンフー戦争に発展する。

ストーリーは単純明快、アクションはのっけから全開。見せ場以外なし!といわんばかりの大サービスが好ましい、能天気なカンフーアクション映画だ。景気のいい作品らしく、元旦から公開となっている。

舞台となるアパートは、壮絶に貧乏な連中がすむ場所で、何十人もの人間がひしめきあって暮らしている。そこに、漫画としか思えないバカバカしい住民キャラがたくさん登場する。頭にカーラーを巻いたオバサンや、ただのハゲオヤジだと思ってみていると、それが実はカンフーマスターで、滅法強かったりするので笑える。

監督のチャウ・シンチーは有名なカンフー映画ファンなので、この映画のキャスティングや音楽には相当なこだわりが感じられる。前述したように、キャラクターはお馬鹿そのものなのに、実はそれを演じる役者は、70年代の香港カンフー映画の大スターだったりするのだ。そうした往年の伝説的な人たちが、しょぼくれた姿で10数年ぶりに映画界に復帰していたりするトコが何より凄い。

『少林サッカー』を見た方にはおなじみの、ワイヤーワークやスローモーション、CGなどの技術で表現されるハチャメチャなアクションも楽しい。パンチで地面にクレーターがあいたり、2階くらいの高さまで人がピョンピョンはねまわるといった、非現実的な動きを十分に堪能できる。しかも、劇中でカンフーの達人たちを演じるのは、実際にマーシャルアーツの先生だったり、長年京劇で本物のカンフーを習ってきたという筋金入りのアクションスターたち。素人役者をワイヤーで振り回して、カメラワークでそれっぽくみせるこけおどしのカンフーアクション映画とはわけが違う。動きの基本部分に本物の香りが漂うから、ぜひ類似品と見比べてほしい。

結構な金をかけて作ったと思われるのに、全体に漂う貧乏臭さを残した点も好ましい。かつての香港映画にあった、思い切りうさんくさい雰囲気がたまらない。ナンセンスなギャグも楽しい。そうした雰囲気の映画が好きな人に、ぜひすすめたい。

『カンフー・ハッスル』は、お正月のお気楽気分にまさにぴったりで、小難しいことを何も考えずに楽しめる娯楽映画だ。2005年の鑑賞一本目として、ぜひ楽しんできてほしいと思う。



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