『シルヴィア』30点(100点満点中)

シルヴィアの内面を描ききれていないか

30歳の若さで死んだ後、ピュリッツァー賞を受賞した詩人シルヴィア・プラスの一生を描いたドラマ。

イギリスのケンブリッジ大学に留学したシルヴィア・プラス(グウィネス・パルトロウ)は、大学院生テッド・ヒューズと、彼の詩に感動したことをきっかけに出会う。やがて、ボストンでの幸せな結婚生活が始まるのだが……。

悲劇の作家として知られるシルヴィア・プラスは、その繊細な詩と若くしてガスオーブンに頭を突っ込んで自殺したことで、伝説の詩人となった。ただ本作では、グウィネス・パルトロウの演技も人物描写も平凡で、映画として突出した何かが感じられなかった。

子供への愛をスポイルしてまで愛する男へ嫉妬する姿は病的でさえあり、とても一人の女性としては共感できないし、(グウィネスが演じているからというわけではないだろうが……)バカっぽいくせに、いつの間にか詩で成功しているのもちょいと都合よすぎるように見える。

詩人を描くのに、その台詞に詩的な表現を多用すればよいというものでもあるまい。これでは彼女の中の、死に値するほどの葛藤が描ききれているとはいえない。グゥイネス・パルトローもヌードにまでなって頑張ったのだが。

というわけで、シルヴィア・プラスのファンがその一生を再確認するために見る以外に、積極的にすすめたくなる作品ではない。



連絡は前田有一(webmaster@maeda-y.com 映画批評家)まで
©2003 by Yuichi Maeda. All rights reserved.